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「がん領域専門MR」に期待しています

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[ 2014年01月17日(金) ]

各製薬会社は領域別に専門特化したMRを育成して、医師・薬剤師への情報提供活動の質の向上を図っています。なかでもオンコロジーの領域は次つぎと新しい分子標的治療薬が市場化されて発展目ざましく、がん領域専門MRの活躍に期待が高まっています。
日頃、MRとの面会の機会の多いがん研有明病院の濱敏弘薬剤部長に、がん領域専門MRに対する要望と励ましのメッセージをいただきました。

  • 濱 敏弘 先生
  • がん研有明病院薬剤部長
  • 薬学博士
  • 新薬開発臨床センター治験薬管理室長

がんの薬物療法が安全に行なわれるために

MRさんは企業の一員ですから当然のこととして、自社製品の売り上げを増やすために医師や薬剤師に情報提供活動をするのが仕事です。しかし、がんの領域では臨床試験の結果から治療アルゴリズムとか標準レジメンが決まります。抗がん剤の選択や投与量、投与方法については、個々の医師に裁量の余地は多くありません。高血圧や糖尿病など他の領域でしたら、「いい薬ですから使ってください」と医師に頼めば売り上げは伸びるかもしれませんが、がんの領域ではMRさんの宣伝によって売り上げが伸びることはほとんどないと思います。学会等でコンセンサスが得られた標準治療に組み込まれた薬剤は、MRさんが宣伝しなくても使われます。がん領域では、MRさんの存在意義は別のところにあります。

細胞毒性のある抗がん剤や分子標的治療薬で治療を受ける患者さんは、つらい思いをしても自分は治ると信じているから治療を受けます。しかし、全ての患者さんのがんを治すことができる薬はまだありません。また、ほとんどの場合、重篤な副作用が発現します。副作用のために治療を断念する患者さんもいます。

がん薬物療法を適正に安全に行う上で製薬企業から提供される情報のアップデートは常に必要です。その情報を現場に届けるのががん専門MRさんの役目です。治験時の安全性の情報や海外での情報、また日常診療で集積された有害事象の詳細な情報などが、迅速に正しく提供されることをMRさんに期待します。

机上の勉強だけだと現場感が足りない

がん領域専門MRになるためには、自社製品はもちろん、他社製品についても深い知識を持っていなくてはなりません。ガイドラインをきちんと理解し、いま自社製品がどういう位置づけにあるのか、どのような臨床試験が試みられているのか、常に新しい情報を把握していなくてはなりません。また当然のこととして、がんの病態についての知識も重要になります。

恐らく机上ではみなさんそれらの勉強をしていると思いますが、患者さんに接した経験がないMRさんがほとんどです。「グレード2の末梢神経障害が50%発現する」という知識はあるのですが、グレード1の有害事象を見たことがありません。MRさんは、自分が売っている薬の効果や安全性について自分の目で確認できないという弱点があるため、時に現場感が足りないと感じることがあります。もう少し医療現場を見るあるいは理解する努力と工夫が必要と思うことがあります。

がん領域専門MRに求められる仕事のレベル

がん治療に当たるオンコロジストは抗がん剤については当然よく知っています。しかし併用する他領域の薬については必ずしも詳しい訳ではありません。たとえば抗凝固薬ワルファリンの作用に影響を与える抗がん剤があります。MRさんがオンコロジストに対して、「ワルファリンと相互作用がありますから注意してください」と言うだけだったら真の専門MRとは言えません。

専門MRとしてすべきなのは、「ワルファリンの血中濃度を○日おきに測定して、INRがこの数値になるまで投与量を調節してください」と具体的に伝えることです。自社の抗がん剤を効果的に安全に使ってもらうためには、ワルファリンのこともよく理解して情報提供することががん領域専門MRとしての仕事です。それをできる人がこの仕事に向いているのではないかと思います。

「使わないでください」と言えること

MRさんの任務は、医師や薬剤師に、自社製品の良いところと安全で適正な使用のための情報を届けることです。薬の効果と安全性は薬だけで決まるのでなく、使う患者さんによっても違ってきます。同じ量の薬を飲んでも全ての患者さんに同じ効果があるわけではありません。薬は使ってみなければわからないところもあります。しかし、最近の分子標的治療薬と呼ばれる薬剤は、患者さんに標的になるレセプターや遺伝子変異の有無などを先に調べて、個別化医療ができるようになりました。むやみに使ってくださいと宣伝するのでなく、エビデンスに基づいて「こういう人には使わないでください」と言えることが重要です。

また、副作用についても、「ここまで出たら投与をやめてください」ときちんと言えなくてはなりません。安全に使われることが長い目で見れば自社製品を伸ばすことにつながります。患者さんを守り自社製品を守るために、それができる人こそ本当のがん領域専門MRだと言えるのではないかと思います。

地域に情報を伝える役割も担ってほしい

がん化学療法の外来化が急速に進んでいます。入院治療の場合は、MRさんは処方する医師に安全性情報を伝えればよいわけですが、外来治療では処方医に伝えるだけでは患者さんの安全性を担保することはできません。患者さんを普段ケアしている開業医、調剤薬局、ヘルパーさん、あるいは家族が、抗がん剤を投与したあと何日目くらいにどういう副作用が出るのかということを理解していないとうまくないわけです。それを伝えるのは病病連携であったり、薬薬連携ですが、製薬企業のMRさんも、処方医だけではなく患者さんをケアする地域のグループに対しても、もっと積極的に情報提供をしていただけるとありがたいと思います。

薬剤師はセイフティマネジメントをするのが仕事

薬物療法を行なうことによって、患者さんは利益も不利益も受けます。利益は治療効果であり、不利益は副作用です。医師はどちらかというと、薬物療法を行なうことによって患者さんにどれだけの利益を与えられるかを中心に考えます。一方、薬剤師は、薬物療法における安全性に注視し、患者さんの不利益をいかに少なくするかというセイフティマネジメントの仕事をしています。

がん領域専門MRさんがMR活動をするときに、医師と薬剤師の役割の違いを理解して、医師には直接言いにくいことも薬剤師の口を通して医師へ情報提供できることをわかって欲しいと思います。医師と薬剤師の職能の違いを認識して情報提供をしてもらえればと思います。

がん領域専門MRに期待される3つの能力

1
自分が提供した情報が医療現場で役に立っているかどうかを確認できる能力
2
医療現場でどういう情報が足りないかを察知する能力
3
医師や薬剤師と話をする中で感じた問題点を会社に報告し、どのようにしたら改善できるか提案する能力

これらの3つの能力を兼ね備えた人が優秀なMRさんと言えるのではないかと思います。

企業間にはそれなりの差が

製薬企業の中には、現在の薬物療法の進歩に見合った製品や情報を出せる会社と出せない会社があり、企業間で新薬開発のレベル差はあると思います。しかし、大規模臨床試験を行ない、新薬を出せる企業だけががん専門MRを目指す人にとって良い企業とは言えないと思います。がん専門MRとして転職を考えているのであれば、がん治療のキードラッグを持っている企業と、先に述べた3つの能力を理解してくれる企業を選べばよい仕事ができると思います。いま多くの患者さんに安全に使われている抗がん剤や分子標的治療薬がありますが、それらの薬が引き続き安全かつ適正に使えるように、がん領域専門MRさんには今後さらに一層よい仕事をしていただきたいと期待しています。

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