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地域医療の中で薬局の果たす役割を考える

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[ 2014年7月31日(木) ]

関西地域でハザマ薬局チェーンを展開するファルメディコ株式会社の狭間研至社長は、大阪大学医学部呼吸器外科出身の外科医です。

家業の薬局を引き継ぎ、医師ならではの発想からユニークな経営を実践しています。
病院を出て街中の薬局の視点から日本の医療を検討すると、また新しい現実や可能性が見えてくるようです。

狭間 研至 先生

  • ファルメディコ株式会社 代表取締役社長・医師

時代のニーズに合わせて薬局も進化する

保険調剤薬局の市場規模はこの40年で急成長してきました。医薬分業が本格的に始まった1974年に年間100万枚だった処方箋枚数が、近年では年間7億9千万枚出ています。市場規模は年商6兆6000億円に達し、上場企業が何社も出現しています。しかしこの強力なビジネスモデルも、ライフサイクルはすでに成熟期に入っています。大手薬局チェーンがシステマティックに全国展開で拡大したために、もう新たに薬局を開く場所は少なくなっています。

一方で医療の環境が変わってきたため、薬局の役割も変化しています。
いままでは、医療機関から出た処方箋をきちんと応受して「この薬は何々の薬ですよ」と患者さんに説明してお渡しすることが任務だったのですが、高齢化が進んだために、そのような業務だけでは収まらなくなってきました。
足が悪いとか認知症があるとかでクリニックに通えない患者さんも増えています。入院日数の短縮化で、かつては病院にいた人たちが介護施設で過ごされるようになっています。病院であれば看護師さんが薬の面倒をすべてみてくれますが、介護施設では入浴・食事・排泄という生活介護がメインなので、薬のことはどうしてもおざなりになりがちです。要介護高齢者が病院以外の場所で薬物治療を受けるときに薬の面倒をみる仕事は、街の薬局の薬剤師が担うようになっています。

高齢者施設に薬を宅配する

いまから10年くらい前に、特別養護老人ホームの薬剤の管理状況を見にいったことがありました。ポリ袋に詰めた薬が段ボール箱で届き、それを介護職員が広げて、シートからちぎって日にちごと分け、たとえば山田さんの薬、佐藤さんの薬と仕分け作業をしていました。
これが大変なんですと施設長や看護師から聞きましたので、全部こちらでやりますよとお引き受けしました。処方箋をFAXで送ってもらって薬を用意し、機械で日付と名前を入れ、朝は赤、昼は黄色、夜は青と分包紙につける印を色分けすることで、ヘルパーさんが配るときに間違いが生じないよう工夫して薬を届けました。このサポートを始めると、施設の看護師さんに「ありがとう、あなたがたのおかげで薬の管理がうまくいくようになった」と感謝されるようになりました。従来の業務では残念なことに薬剤師がお礼を言われることはめったになかったので、これは大変うれしい経験でした。

4施設400人くらいの患者さんの処方箋を引き受けるようになって、在宅支援専門の薬局をつくりました。
こちらから薬を届けるのなら薬局の立地はどこでもいい。ビルの4階でも5階でも可能です。
家賃も安くなるし大変興味深く感じたこともあり、特別養護老人ホームだけではなく、介護付有料老人ホームやサービス付高齢者住宅など新規にできた多彩な老人施設を積極的に開拓しました。門前薬局ですとクリニックの先生に万一のことがあったり事業継承がうまくいかないと経営は厳しくなって、ビジネスとしては大変リスキーですから、独立性を保てる老人ホームや在宅のほうへシフトしていきました。

在宅医療における薬剤師の役割

在宅医療では、医師が患者宅に往診して作成した処方箋を受け取って、薬を迅速・正確にお届けするのが薬局の基本業務です。薬剤師が患者さんの自宅へ薬を届け、説明をして帰るのもそれなりの意味はあるのですが、それだけではもったいない。医師が行けるのは月に2回です。それ以外のときに薬剤師が行って血圧の薬をちゃんと飲んでいるかをチェックした上で、実際に血圧を測定して、おかしかったら医師に連絡するようにしています。

薬局の業界では薬剤師は患者さんの体にさわるのは法律違反ではないかと考えられてきましたが、それは事実と異なります。うちの薬局では薬剤師にバイタルサインの取り方を私が教育訓練しています。
血圧計や聴診器、SpO2モニターなどの扱い方に薬剤師たちは習熟しています。
たとえば喘息の患者さんに「これは気管支が広がるお薬です」と渡したら、気管支が実際に広がっているかどうか呼吸機能をチェックするのが医療担当者としての筋です。便秘薬を出したら便が出たかどうか、鎮痛薬を出したら痛みが止まったかどうか聞かなくてはいけない。いままでは薬を渡したら薬剤師の仕事は終わりでした。薬の効能効果を確認するところまで薬剤師が業務をちょっと広げると、医療のあり方はずいぶん変わるのではないかと思います。

薬剤師が血圧を測って、「先生、えらい血圧下がり過ぎていますよ。その理由はこういうことではないですか」と薬学の専門性から医師にアドバイスすべきです。自分がしばらく診ていない在宅患者さんの情報を届けてもらえれば、医師も感謝してくれるはずです。薬剤師が往診に同行するといろいろな話ができて、医師と話が通じやすくなります。

私自身はいまクリニックで診療もしているのですが、自分があまり使ったことのない領域の薬を薬剤師が説明してくれると大変助かります。「薬剤師が一緒に考えてくれることで孤独から解放された」と言う医師もいます。
在宅医療では医師と保険薬局の薬剤師が共同して患者さんを診る時代が来ているのではないか。
地域医療における新しい治療戦略だと私は思います。

後発品の使用が促進される環境のなかで

後発品の使用促進は国の政策です。
調剤薬局も医療費削減のために後発品の使用に務めなくてはなりません。医師が一般名処方したり、変更不可にチェックしない限り、薬局ではどの後発品を選んでもよいことになっています。後発品の銘柄選択権が病院から薬局に移りつつあるのです。どの製品にするかを現場で決めさせている薬局もあると思いますが、10店舗もあるチェーン薬局であれば本社で決めていると思いますので、MRさんは本社に説明に行かなくてはなりません。

たくさんある後発品の中から調剤薬局はどういう基準で銘柄を選んでいるか、後発品メーカーさんは知る必要があります。当社ではいくつかの基準を決めています。安定供給できるかどうかは非常に大事なポイントです。
原薬メーカーを少なくとも2社以上持っていることが必要です。また、高齢者医療の支援で1包化にするときには監査に時間と手間がかかるのですが、その対策ができている製品を選びます。錠剤にレーザー印字をしていると、圧倒的に見やすく作業効率が上がります。それから割線が入っていてピシッと割れること。
500錠とか1000錠とかボトル入りのバラ品があること。いちいちシートから取り出すのは大変な労力です。
これらの条件に合った製品を当社では優先的に採用しています。

日本の医療には国際競争力がある

高齢化率がさらに進んでも国民皆保険を何とか維持していくために、その中心的な役割を薬局が担う必要があるのではないかと考えます。薬剤師が薬を渡すだけでなくもっと業務を広げれば医師は自分の仕事に専念して、より多くの患者さんをフォローすることができます。安くてよい医療をより多くの人に提供できるようになると思います。

薬局には病院にはない素晴らしい利点がいくつもあります。予約がいらない。待ち時間が短い。開店時間が長い。「いらっしゃいませ」と出迎えてくれる。うちの薬局では店頭で無料の医療相談を行っておりますが、病院と違うオープンで明るい雰囲気ですので、患者さんはかなりリラックスされているようです。

日本の医療はこれから国際競争力を高めて医療立国を目指すべきだと思います。日本は高齢化率が23%を超えましたが、今後、各国の人口構成も日本を追いかけてきます。なるべく医療費を増やさずに高齢者を診ていくとなると、介護との一体化とか、いろいろな施策があると思いますが、日本ではこれから10年15年で一定の形をつくると思います。かつての自動車や家電産業のように医療も安くて高品質という条件を満たしており、海外進出できる可能性は充分にあります。教育プログラムとか業務支援プログラム、遠隔モニタリングシステムなどを含めて、薬局や薬剤師を活用した地域医療支援モデルは国際競争力を持つはずで、将来的には医療立国の一端を担っていくのではないかと期待しています。

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