前回、製薬会社各社の年頭所感や『新薬開発展望』について、一部をご紹介しました。国内外ともに多くの企業が「競争」というキーワードで展望を語る中、世界最大手のファイザーは競争ではなく、『共闘』を訴えていました。
ファイザーは、昨年12月、製薬企業として初めて、がん個別化治療を推進するワールドワイド・イノベーティブ・ネットワーク(WIN)コンソーシアムへ参画。このことを例に挙げながら、企業間の壁を取り払い、上流から下流まで、共に新薬の創出を目指す必要性を強調しています。
ファイザーを『共闘』へと駆り立てるのは、製薬企業が抱える開発失敗の問題――資金的リスクはもとより医療の発展とアンメット・メディカル・ニーズに対しても打撃を与える――という課題。
内資系企業と外資系企業。立場や思惑はそれぞれですが、特許切れ問題以降、製薬企業が考える目標・課題は、とてもシンプルな答えに行き着いていると思います。それは、画期的な新薬の一刻も早い創薬、良い薬を早く作って患者に届けたいという、製薬会社のレゾンデートルそのものです。
市場を成長させるのは企業間の競争ではありますが、新薬開発に伸び悩む現在、どうしたら望まれる画期的な新薬を生み出すことができるのか、製薬会社としての原点に立ち返って考えたとき、ファイザーの主張はとても自然なものなのかもしれません。
実は国内企業でも、こうした連携強化を意識する声は多数見受けられました。
例えば抗HIV薬開発を他社とのジョイントベンチャーで進める塩野義、スーパーコンピューター『京』をはじめ外部とのコラボレーションを掲げる大日本住友製薬など。
日本を世界から見つめるファイザーは、その広い視野から、よりいっそう強くその必要性を感じているのかもしれません。同社は日刊薬業(平成25年1月9日号)の『今年の新薬開発展望』を次のように結んでいます。
「産官学のみならず企業間の垣根を取り払い、資金やリスクを共有し、治療のパラダイムシフトを起こす新薬の創出を共に成し遂げていくようになる。日本においてもこの大きな波は避けられず、我々はこういった動きを見据えて日本のサイエンスを世界の患者さんに届けることをすすめていきたい」
『共闘すること』。これが2013年の業界キーワードの1つになることは、きっと間違いないでしょう。
(文・須藤 利香子)