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2012年欧米大手製薬10社の業績に見るパテントクリフの影響と抗体医薬の躍進

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[ 2013年02月21日(木) ]
パテントクリフの影響を受けた商品の売上

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日刊薬業2月12日号に、欧米大手製薬10社の2012年業績(1~12月)が発表されていましたね。

 

2010年前後に集中する、低分子医薬品の大型商品の特許切れ問題。最近ではパテントクリフという言い方がされています。パテントクリフのピークは2011年と言われていましたが、上記を見る限り、2012年の欧米各社の業績にも暗い影を落とすこととなりました。

その一方、増収だったのはロシュ、アボットなど。好調の要因は、希少疾患用医薬品やオンコロジー分野の製品でした。

特にロシュの抗がん剤「リツキサン」とアボットの「ヒュミラ」は、どちらも正式名の「リツキシマブ」「アダリムマブ」の「~マブ」が示すとおり、抗体医薬。

抗体医薬の市場は現在、400億米ドル超と言われており、10年以内に今よりも倍の規模になると言われています(2020年には日本国内だけでも5,000億円規模になると予測されています)。

抗体医薬は1980年代にも一度研究開発ブームが起きましたが、そのときは技術力が発展途上だったため、ほとんどが失敗。その後、ヒトと同等の抗体を作成できるようになり、2001年には約40億ドルの規模となりました。その後とんとん拍子で開発が進み、2009年には9倍の約364億ドル、そして現在の400億ドル超へ。

このような時代の流れをいち早く汲んだのが、上でご紹介したロシュ。1990年に米バイオベンチャーのジェネンテックを子会社化し、抗体医薬の開発に取り組む中外製薬と戦略的アライアンスを結んだことが、現在の結果に繋がっていると言えます。

抗体医薬は人間の免疫力を利用するため、低分子医薬品に比べて標的へのターゲティングに優れ、副作用が少ないのが特徴的。現在、オンコロジー分野を中心に、アレルギー免疫や感染症などの分野で開発が進められています。2011年度の医薬品ランキングで紹介される上位の大型薬の中でも、リツキサンは8位にランクイン。レミケードは3位、ヒュミラは4位、アバスチンも12位と、抗体医薬が多数ランクインしているのがわかります。

パテントクリフ以前のブロックバスター時代が低分子医薬品中心だったことを思うと、あらためて製薬業界全体が抗体医薬の開発へと向かっている時代の流れを感じずにはいられません。

MRの皆さんにとっても、企業の将来性を見極める上で、「その企業が抗体医薬とどう付き合っていこうとしているのか」は、欠かせない要素の1つになりそうです。

(文・須藤 利香子)

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