ある地域や特定の診療科で医師が不足する医師の偏在問題。日本の医療をとりまく大きな課題として長らく指摘されてきましたが、ついに厚生労働省が医師の「自由開業」「自由標榜」の見直しに言及したことが話題を呼んでいます。
自由開業・自由標榜とは、医師であれば全国どこでも自由に開業でき、掲げる診療科を自由に選べる、というもの。長年、日本の医療の原則として貫かれてきました。しかし、開業医が都市部などに集中する一方、過疎地などでは開業する医師が少なく、偏在の原因の一つとも言われてきました。
医師の偏在問題を議論している厚労省の検討会が6月3日に公表した「中間とりまとめ」では、「将来的に仮に医師の偏在が続く場合には」との条件付きながらも、「十分ある診療科の診療所の開設については、保険医の配置・定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直しを含めて検討する」との方針を示しました。
厚労省の調査によると、2014年10月1日現在の診療科別の診療所数は、内科が全体の63.6%を占め、小児科(20.8%)、消化器内科(18.6%)と続いています。自由開業・自由標榜の見直しが実現するかはまだ不透明ですが、地域の状況によっては、すでに多くの診療所がある診療科は新規開業が認められなくなったり、違う診療科への変更を求められたりするようになるかもしれません。
特定の診療科で新規開業が認められないとなると、開業を諦めた医師は病院にとどまり続けるのか…。開業するために別の地域に行ってしまうのか…。あるいは、不足している診療科の診療所が増えて新たなマーケットが開けてくるのか…。
さまざまな可能性が考えられますが、いずれにせよ地域のマーケットに与える影響は決して小さくはなさそうです。
中間とりまとめにはこのほか、医師数が不足する診療科や地域について、都道府県が確保する医師数の目標を決め、専門医の定員を調整することなども盛り込まれました。
検討会は今後、こうした対策を具体的に詰め、年内に最終的な報告書を取りまとめることにしています。ただ、「医師の配置に規制を求める声がある一方、「国が強制するのはおかしい」という意見も根強く、論議を呼びそう」(5月21日朝日新聞デジタル)です。顧客の動きにも関わることですので、MRとしても今後の議論に注目しておきたいところです。
(文・前田雄樹)