ここ最近、日本のバイオベンチャーが新薬の臨床試験に失敗したというニュースが相次いでいます。
5月には、米アキュセラ・インク(創業者は日本人)がドライ型加齢黄斑変性を対象に開発していたエミクススタトの臨床第2b/3相(P2b/3)試験で有効性を示せなかったと発表。加齢黄斑変性に対する初の飲み薬として期待を集めていましたが、ネガティブな試験結果にパートナーだった大塚製薬は共同開発契約を打ち切り。特定の遺伝子を持つ患者には有効性が示唆されましたが、共同開発の終了に伴って詳細なデータ解析も中止に追い込まれました。
今月5日には、アンジェスMGが開発中のアトピー性皮膚炎に対する核酸医薬がP3試験で主要評価項目を達成できなかったと発表。ナノキャリアの技術を使って日本化薬が開発している抗がん剤パクリタキセルを内包した高分子ミセル(ナノ粒子)製剤も、同じ日にP3試験で主要評価項目を達成できなかったと発表されました。
製薬企業にとって、新薬の開発失敗のリスクはつきもの。治療ニーズの満たされていない疾患領域に開発の軸がシフトしていることや、創薬の“種”が枯渇していることを背景に新薬開発のハードルは格段に上がっています。欧米のメガファーマでも、新薬開発の失敗は珍しいものではなくなってきています。
日本では長らく「バイオベンチャーが育たない」と言われてきました。大きな理由として指摘されてきたのは、リスクマネーの不足。資金調達ができず、事業が立ち行かなくなったバイオベンチャーは枚挙にいとまがありません。
しかし最近では、政府のバイオ振興策を追い風にバイオ分野への投資が増加。それに伴い、バイオベンチャーによる新薬開発も活気付いてきていました。
そうしたタイミングだっただけに、バイオベンチャーによる臨床試験の失敗が相次いだのは残念でなりません。新薬開発のリスクの高さを改めて印象付けた今回の出来事が、ようやく花開きつつあるバイオベンチャーへの投資の冷え込みにつながらないよう、願うばかりです。
(文・前田 雄樹)