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特許切れ問題から脱却する企業・大日本住友製薬の攻勢 前編

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[ 2014年10月02日(木) ]

特許切れ問題から脱却する企業・大日本住友製薬の攻勢 前編9月26日のビジネスジャーナルに「製薬各社を悩ます特許切れ問題とは?」という記事が掲載されるなど、製薬業界の特許切れ=パテントクリフは業界外からも注目される関心事となりました。主力製品を失った製薬メーカーがいかにして売上増大を目指すのか。今回は「アムロジン」等の主力製品を失った大日本住友製薬の今に着目したいと思います。

大日本住友製薬といえば、古くから精神疾患領域に強みを持つ企業。あの太宰治や坂口安吾の小説には、たびたび同社製品の「ヒロポン」が出てきます。

同社では、近年、がん分野を成長戦略の一つに位置づけ、2012年には、オンコロジー領域で実績のあるボストン・バイオメディカル(米国)を買収しました。その結果誕生したのは、昨年の未来図MR「がん幹細胞を攻撃する、大日本住友製薬発の画期的新薬に寄せて」でご紹介した、癌の再発や転移の原因となるがん幹細胞を直接攻撃する画期的な抗がん剤。正式には「BBI608」と「BBI503」の2種がそれにあたります。

「BBI608およびBBI503は、米国子会社Boston Biomedical, Inc.が創製し、がん幹細胞(幹細胞様性質を有するがん細胞)の自己複製を阻害し、がん細胞に加え、がん幹細胞に対して細胞死を誘導する新しいメカニズムのファースト・イン・クラスの低分子経口剤です。がん幹細胞およびがん細胞の両方に作用するために、がん治療の課題である治療抵抗性、再発および転移に対する効果が期待されます(大日本住友製薬ホームページより)

世界的に注目が集まるこの新薬、かねてから一部メディアでは早くて2014年末に北米で承認申請すると噂されていました。また、この承認に伴い、「2014年中に、抗がん剤専任の大規模MR(医薬情報担当者)組織を編成する。(中略)最低でも200―300人規模になる模様」(日刊工業新聞)と報じられるように、MR体制の強化を進めてきました。

ところが、2014年6月、同社はホームページ上でBBI608の第Ⅲ相国際共同治験の新規患者登録中止を発表。2014/5/23付の日本経済新聞には「大日本住友製薬、結腸直腸がん薬開発を事実上取りやめ」という見出しが躍り、「臨床試験を中止するのは、がんの再発や転移の原因となるがん幹細胞を直接攻撃する抗がん剤「BBI608」。世界で大規模な売り上げを見込める新薬候補と位置付け、2015年度にまず米国で販売する予定だった」と報じられました。こうした報道に一喜一憂したMR(医薬情報担当者)も多いのではと思いますが、実際のところ、BBI608の開発自体が取りやめになった訳ではない模様。

実際は結腸直腸がんを対象とした臨床試験で効果が得られなかっただけ。その他の様々な固形がんに対して第Ⅰ相~Ⅲ相まで複数の臨床試験を進めているとのことです。加えて、BBI608とは全く異なるメカニズムによってがん幹細胞へアタックするBBI503の臨床開発は、引き続き進められているそうです。一部では年間8億ドルの売上を目指すと噂され、がん治療に大きな変化を与えるであろう画期的な新薬です。両薬剤の今後を見守りたいところですね。

(文・須藤 利香子)

(大日本住友製薬ホームページよりhttp://www.ds-pharma.co.jp/news/2014/20140515.html
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