昨年8月、協和キリンが子会社を通じて発売した腎性貧血治療薬「ネスプ」のオーソライズド・ジェネリック(AG)。国内初のバイオ医薬品のAGとして販売動向が注目されていましたが、協和キリンの決算発表でかなりの売れ行きであることが明らかになりました。
協和キリンが2月5日に発表した2019年12月期決算によると、ネスプの売上高は前期比37.4%減の336億円となった一方、AGは発売4カ月で140億円を売り上げました。バイオシミラーがかつて発売初年度でこれだけ売れた例はなく、協和キリンはAGのシェアを明らかにしていませんが、かなりのスピードで切り替えが進んだ模様。20年12月期はネスプが88.1%減の40億円まで落ち込む一方、AGは119.3%増の307億円の販売を計画しています。
AGの発売後、3社がネスプのバイオシミラーを発売しましたが、やはりAGには歯が立たないよう。キッセイ薬品工業のバイオシミラー(昨年11月発売)は20年3月期に5億円の売り上げにとどまる見込みです。
低分子医薬品の世界では特許切れ対策として定着した感のあるAG。製薬メーカー各社の力点がバイオ医薬品に移る中、今後はバイオAGも増えていくかもしれません。
腎性貧血の分野では昨年、アステラス製薬が新しいタイプの治療薬となるHIF-PH阻害薬「エベレンゾ」を発売。今年はさらにHIF-PH阻害薬として3製品が相次いで発売される見通しで、こちらも販売が本格化します。
AGが販売を伸ばす中、バイオシミラーはどう立ち向かい、新規作用機序の薬剤はどんな立ち位置を築くのか。MR(医薬情報担当者)としても、市場の行方から目が離せません。
(文・前田雄樹)