先日、アステラス製薬がバイオベンチャーのイーベックと、完全ヒト抗体に関するライセンス契約を結んだことが報じられました。
イーベックは北海道に本拠地を置く、たった13名の小さな会社。
それが今回の契約によって、一時金だけでも130億に上る支払いを受け取るというのですから、小さな製薬会社やベンチャーにとって大手製薬会社とのライセンス契約の持つ意味は、果てしないものがあります。
ところがその一方で、2010年1月から2011年6月にかけて、大手製薬会社が小さな製薬会社やバイオベンチャーなどとのライセンス契約を多数解除していたことが最近話題になっています。
GBIリサーチの調査によると、
「大手製薬会社による戦略転換が重要な取引の契約解除の最も主な原因で、契約解除全体の60%を締める 」とのこと。(株式会社グローバルインフォメーションプレスリリース「製薬業界におけるパートナーシップ解除の理由、6割が大手製薬企業の戦略転換」より)
ここ数年、2010年問題への対策もあり、大手製薬会社のM&Aは活発化してきました。
加えて、新薬の開発状況や、市場ニーズとコストに応じた製品パイプラインの優先度変更も、企業の全体戦略に大きな影響を与えています。こうした状況は、現在の市場感から言っても、もうしばらくは続くことになるでしょう。
中小企業にとって、大手とのライセンス契約はいつ契約が解除されるかわからないというリスクも孕みます。
万が一、解除となった場合、ライセンス収入への依存度が高い会社ほど、経営の危機にさらされてしまいます。
とはいえ、世界ランク級の大手企業とのライセンス契約は、企業にとって大チャンスにはかわりありません。
現在、中小製薬企業やベンチャーにお勤めの方は、いま一度、こうした大手とのライセンス契約状況と市場の動向に注目してみてはいかがでしょうか。
(文・須藤 利香子)