今回の診療報酬改定のポイントは大きく3つ。
- 病床の機能分化(7対1病床からの移行促進)
- かかりつけ医・かかりつけ薬剤師の機能強化
- 在宅医療の拡充
です。国が2025年までの構築を目指す「地域包括ケアシステム」を強く意識した内容となっており、厚生労働省の幹部は今回の改定を「地域包括ケア元年」と位置付けています。
地域包括ケアシステムは、製薬企業、特にMR(医薬情報担当者)も所属する営業部門のあり方にも大きな変化を迫ります。医療機関の役割や患者の“居場所”が変わることで、使われる薬剤の種類や、薬剤が使われる場所も変わるからです。
地域包括ケアシステムとは、医療や介護が必要になっても、住み慣れた地域で長く療養生活を続けられる仕組みのこと。これまでの「病院中心の医療」から、「患者の生活圏を中心とした医療」への変化を意味します。
そうなると当然、医療機関の役割にも変化が出てきます。今回の診療報酬改定では、急性期患者を受け入れる7対1病床の入院基本料の算定要件を厳格化。地域包括ケアシステムをバックアップする「地域包括ケア病棟」の算定基準も一部見直し、急性期病床との棲み分けを図りました。
一方で、患者が早期に退院できるような環境を整備する医療機関への報酬は増額。かかりつけ医・かかりつけ薬剤師への報酬も手厚くし、在宅医療の点数も引き上げました。患者の居場所は「病院から地域へ」と確実に変わっていきます。
製薬企業にとっては、施設や医師のターゲティングを見直すのはもちろん、もう少し長い目で見ると、営業体制自体も変化させていく必要性も出てきます。
製薬企業の間では、すでに、「地域」に重点を置いて営業戦略を見直したり、営業組織を再編したりする動きが出ています。エーザイは地域営業強化策の一環として担当部署を大幅に増やしました。協和発酵キリンは、従来のような「病院担当」「開業医担当」という分担をなくし、2次医療圏全体をカバーする体制を構築しようとしています。
2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されており、地域包括ケアシステムの構築に向けた動きは一段とスピードアップします。製薬企業の地域重視の姿勢も強まりそう。MR活動にも大きく影響しますので、動向には注意しておいたほうがよさそうです。
(文・前田 雄樹)