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日本の製薬メーカー勢、注目の抗体医薬品開発で巻き返しなるか

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[ 2016年03月03日(木) ]

日本の製薬メーカー勢、注目の抗体医薬品開発で巻き返しなるか副作用が少なく、有用性も高いことから注目が集まるバイオ医薬品。その中でも、抗体医薬品の開発に注目が集まりますが、これまで日本勢は開発競争で海外に大きく遅れを取ってきたと言われてきました。

ところが今、その様相が変わりつつあります。

2014年9月に発売された小野薬品工業のオプジーボ点滴静注は、自社開発となる抗体医薬品。2015年だけで当初予想を上回る30億円の売上を叩きだし、「同薬は国内だけで800億円超の売り上げが見込まれる。海外からのロイヤルティ収入も加えると1500億円突破もありうる」(会社四季報ONLINEより)といわれています。

2016年3月2日の日本経済新聞によると、アステラスが東京大学と産学連携し、スーパーコンピューターを用いた抗体医薬品の高効率開発方法を確立。

「アステラスは大阪大学の中村春木教授と東京大学の津本浩平教授と共同で、抗体の3次元構造をスパコンで予測する技術を確立した。新薬候補の抗体をどう変 形すれば薬になるかをスパコンが予測する。予測結果を基にマウスで抗体を作り機能を検証したところ、従来は3割程度だった予測精度が約9割となった。予測 技術を実用化できれば国内初とみられる」日本経済新聞「新技術で抗体薬開発を加速 アステラス・中外製薬」

 これまでロシュ製品の販売を行う事でバイオ市場での存在感を示してきた中外製薬も、2015年10月に抗体医薬品の開発に注力すべく、372億円を投資して浮間工場に新たな設備を建築(2019年完成予定)。これにより、培養槽の容量が13,000リットルから4倍近い49,000リットルに増加するとされています。

現時点で製造する品目は未定ということですが、同じく3月2日の日経新聞では、

中外製薬は体内の酸性度に応じて抗体が分解されずに何度も抗原に結合できるようにした。薬の投与回数を減らせるため患者の負担が軽減され治療費抑制も期待できる。現在、18年以降の実用化を目指しリウマチ治療薬を改変して作った抗体医薬の治験を進めている」

と報じられています。

かつては低分子医薬品がブロックバスターの大半を占めていましたが、今や、世界の医薬品売上高トップがアッヴィのヒュミラ。その他にもレミケードやリツキサンなど…ベスト10のうちの半数を抗体医薬品が独占。抗体医薬品の市場規模は国内だけで見ても5000億円程度とも言われています。

抗体医薬品を含むバイオ医薬品は、正常細胞を攻撃せずターゲットに的確に作用する働きから、オンコロジーなどニーズの高い分野で特に画期的な新薬が期待されています。加えて構造が複雑であるがゆえ、他社による製品コピーが困難。バイオ医薬品のジェネリック的存在がバイオ“シミラー”(類似した)という名前で呼ばれているように、低分子医薬品ほどの同等性を出すことはまだまだ不可能とされています。

政府が進めるジェネリック普及策や最近導入が決定された特例拡大再算定の問題もあり、後発品に売上を脅かされる心配の少ないバイオ医薬品市場は、今後ますます開発競争の主戦場として、成長を加速させることでしょう。

今後、抗体医薬品の市場勢力図がどう変わっていくのか…MR(医薬情報担当者)としても注目です。

(文・須藤利香子)

 

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