先月、エーザイが米バイオジェンとアルツハイマー病の新薬を共同開発すると発表しました。抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブで、もともと共同開発・共同販売のオプション権を持っていたエーザイが、予定より前倒しでこの権利を行使することを決めました。
アルツハイマー病の新薬といえば、このところ開発の失敗が相次いでいることは皆さんもご存知の通り。米イーライリリーの抗アミロイドβ抗体ソラネズマブや、米メルクのBACE阻害薬ベルベセスタットは、いずれも臨床第3相試験に失敗しました。
抗アミロイドβ抗体やBACE阻害薬は、脳にアミロイドβという異常なタンパク質が蓄積することでアルツハイマー病を発症するという仮説に基づいたもの。しかし相次ぐ臨床試験の失敗で、この「アミロイドβ仮説」自体に疑念を示す研究者も出てきています。
一方、エーザイの内藤晴夫CEOは「アミロイドβがアルツハイマーの主要な病因の1つであるとの自信を深めている」ときっぱり。アデュカヌマブも「開発成功の確度は高い」と共同開発に乗り出した理由を説明しました。
エーザイは20年近く前に「アリセプト」を世界初のアルツハイマー型認知症治療薬として発売。いわば認知症治療薬の“老舗”です。エーザイはアデュカヌマブのほかにも、BACE阻害薬エレンベセスタットと抗アミロイドβ抗体BAN2401を開発中。新たにアデュカヌマブの開発にも加わることで「アミロイドβ仮説に基づいた次世代アルツハイマー病治療薬の開発を加速させる」(内藤CEO)構えです。
国際アルツハイマー病協会によると、世界の認知症患者は現在4700万人に上り、2050年には3倍に増える見通し。日本でも2025年に患者数が700万人を超えると予測されています。アンメットメディカルニーズも高く、開発に成功すれば大型化が期待されます。
エーザイとバイオジェンは新薬開発と並行して、診断や治療、そして薬価など、次世代アルツハイマー治療薬の普及に向けた環境整備も進めていく方針です。連戦連敗のアルツハイマー病治療薬の開発ですが、今度こそ成功となるのでしょうか。MR(医薬情報担当者)としても注目です。
(文・前田 雄樹)