オーファンドラッグへの各企業の注力の裏で、二極化するMRの立場について、前回はお話ししました。患者数が少なく、数の競争がそれほど必要にならないことから、オーファンパシフィック社は、オーファンドラッグのPRをMRではなくwebを使って効率的に行う方針を打ち出しています。
それとは対称的に、ファイザーは、「患者数が少ないからこそ」と100名規模のMR体制を作り上げました。そして、その理由は次のようなものだとお話ししました。
・希少疾患ゆえの医師の診察の難しさを助けること
・医師だけでなく看護師にも希少疾患の啓蒙活動を行うこと
・症例数の少ないオーファンドラッグの市販後調査を行うこと
従来のMR活動に比べると、ずいぶん専門性が高いように思えます。これには2つの背景があります。
1つは、希少疾患の中には、医療現場でさえ認知度の低いものがある、ということ。そうした場合、その病気には、むしろ製薬企業の方が精通していることになるため、MRから医師へ、病気の特長などを伝えながら、全国で医療の向上を図っていくことが求められます。
もう1つは、オーファンドラッグが、一般的な薬に比べて患者が少ない分、少ない症例数で上市するケースがほとんどだということ。より安全性を担保するためにも、医師と二人三脚での市販後調査が肝となるのです。
もちろんファイザーでもITの活用が検討されています。ですが、それはあくまでMRのこうした業務を助ける効率化の側面でのこと。あくまで主たるはMRとし、人の手でしかできない高度な役割を、MRが担っていくことになります。
オーファンの狭い市場では、患者数の少ない病気の場合、患者がどこの誰かまでわかるほどだといいます。自分の担当する薬が誰の生死を左右したのかさえわかってしまう……という中で、患者一人ひとりを思い浮かべながら薬を届け、症例の少ない病気に対し、市販後の副作用調査を行ってゆく過程は、従来のMR活動とは印象が大きく異なるもの。医療の発展を自分が担っている、という手応えをダイレクトに感じる機会が多いと言います。
より社会貢献度を高めつつ、専門化しながら、患者との距離が縮まっていくMRの仕事。オーファンドラッグ時代の訪れが、新しいMRのあり方を生んでいると、言えるかもしれません。
キャリアアップ志向の方や、より社会貢献度の高い仕事に挑戦したい方、やりがいを重視したい方は、オーファンドラッグに挑戦してみてはいかがでしょうか。
MR BiZに掲載中の、オーファンドラッグの求人(2012年6月現在)
(文・須藤 利香子)