アステラス製薬、エーザイ、武田薬品工業など製薬会社225社で構成する、医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(医薬品公取協)が、MRによる医師への接待にかかわる自主規制を、2012年4月から強化することが発表されました。
これにより、来年4月からは、
- 接待上限額2万円まで(商談・打合せを伴う飲食は5,000円まで)
- 2次会、ゴルフやカラオケ、観劇やスポーツ観戦、2次会などは費用を出さない
- 製品説明会の弁当・茶菓など 3000円まで
ということが決まりました。
以前からささやかれていた「MR(医薬情報担当者)の接待禁止令」の実態がついに公表されたわけですが、皆さんはどのように思われましたか?
ツイッターをはじめ、ネット上でも記事は活発に紹介されています。「MRにとって大変な時代がやってきた」「やばい、もうウチの製品売れない…」「メーカーによってはむしろ楽になる」など、業界関係者と思われる方々が、様々な意見を書き込んでいるのが見受けられました。
中には「これでMRがどっと減る」「MR数を減らすための布石なのでは」といった悲観的な見方もありました。実際のところ、今回の決定は全国のMRにどのような影響を与えるのでしょうか。
まず、懸念されているMR数の減少に関してですが、今回の決定は、政府の事業仕分けではなく、医薬品公取協によるもので、以前から業界内で問題視されてきたプロモーションコードの問題にメスを入れるためのもの。
接待が減ったからと言って、医師の数が減るわけではありません。単純に、これまで接待に当てていた時間を、別のアプローチ方法に置き換えることになりますから、MR数を減らすわけにもいかないのが現状でしょう。
あるベテランのMRの方は、今回の件についてこうお話しされています。
「今回の自主規制は、むしろ前向きに捉えた方が良いニュースだと思いますね。今まで接待で医師に気に入られて薬を採用してもらっていた人も、これからは患者さんのことを考えて提案することが1番の近道になります。
そうすれば、今まで以上に患者さんのニーズが分かるようになりますし、今まで以上に、自分の製品の良さを感じることになる。先日のファイザーの後発薬参入会見で松森取締役が『新薬だけが治療に貢献しているわけではない』と仰っていましたが、まさにその通りなんです。
私も以前は接待中心のMR活動をしていました。お酒をごちそうするのはもちろん、医師と海外旅行に行ったり、コーヒーマシンをプレゼントしたり…。疲れてしまって、仕事のやりがいを見失った時期もありました。
今、同じような悪循環に陥っているMRは、この自主規制強化が、ご自身のMR活動の方針を変える良いキッカケになると思います」
(文・栗山 鈴奈)