大型の生物学的製剤がしのぎを削る関節リウマチ治療薬市場に、今年から来年にかけて製薬各社の新製品が相次いで登場する見通しです。
まず、今夏にも発売が見込まれるのが、日本イーライリリーの「オルミエント」(一般名・バリシチニブ)。炎症に関わる細胞内のシグナル伝達を阻害するJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬と呼ばれる薬剤です。飲み薬でありながら、抗リウマチ作用は生物学的製剤と同じ「最強」クラスに分類されます。
経口剤で効果が高いとなれば多くの患者に使われそうですが、市場浸透は簡単ではなさそうです。というのも、2013年に発売されたファイザーのJAK阻害薬「ゼルヤンツ」は、安全性への懸念から発売から4年たった今も全例調査が続いており、処方はなかなか広がっていません。「オルミエント」にも「ゼルヤンツ」同様、承認の条件として全例調査が課されました。急速は普及とはならなそうですが、2剤目となるJAK阻害薬がどう市場を切り開いていくのか、筆者個人として注目しています。
「レミケード」や「エンブレル」「ヒュミラ」など大型製品がひしめく生物学的製剤にも、新薬が登場します。
サノフィとヤンセンファーマは昨年10月、炎症性サイトカインの一種であるIL-6(インターロイキン6)の作用を阻害する新たな抗体医薬を申請しました。サノフィはサリルマブ、ヤンセンファーマはシルクマブ(いずれも一般名)です。IL-6の作用を阻害する抗体医薬としては、中外製薬が「アクテムラ」を発売済み。2016年の売上高は302億円と、前年から10%以上増加しました。
さらに見逃せないのがバイオシミラーです。関節リウマチの適応を持つ生物学的製剤として売上高トップの「レミケード」に続き、2番手の「エンブレル」にも来年、バイオシミラーが登場しそう。持田製薬がすでに申請しており、2017年度中の承認を見込んでいます。
生物学的製剤を中心に市場が拡大する関節リウマチ治療薬ですが、民間調査会社の富士経済は、売上高上位の製品にバイオシミラーが登場することで、市場拡大のペースは緩やかになっていくと予測しています。製薬各社のパイプラインには多くの新薬やバイオシミラーが控えており、競争はさらに激しなりそう。この領域で転職を考えているMRの方は動向に注目です。
(文・前田雄樹)