京都大iPS細胞研究所のチームは1日、筋肉や腱(けん)などの組織の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」について、既存の免疫抑制剤「ラパマイシン」に進行を遅らせる効果があることをiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った再現実験で発見したと発表した。FOPの治療薬として国の承認を受けるため、実際の患者に投与する「治験」を近く京都大医学部付属病院で始める。iPS細胞を活用した創薬での治験は世界初。 (毎日新聞2017年8月1日より引用)
2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が、マウスでiPS細胞の樹立を成功させたのは2006年のこと。その翌年には人間の皮膚細胞からの樹立に成功。iPS細胞は、人工的に臓器や細胞を生成する再生医療の道を拓くものとして、大きく注目されました。
それから10年となる今年。今回のニュースで、iPS細胞は今後、創薬においても大きな役割担っていくことが、改めて証明されたといえるでしょう。ニュースにあったiPS細胞を使った再現実験とは、患者の皮膚からiPS細胞を生成し、病気を忠実に再現することで、病気のメカニズム分析と、効く物質を見つけ出す工程をより迅速かつ精度高く実現する、というもの。ビッグデータ解析やAIによる創薬と相まって、創薬の現場が大きく変わろうとしています。
アンメットメディカルニーズと呼ばれるように、まだまだ治療法が確立されていない病気が数多く存在する現代。iPSやAIを活用した“次世代の創薬”が担う役割に期待が集まります。新薬のリリースサイクルが速くなれば、それだけMR(医薬情報提供者)の採用も活発になるかもしれません。パテントクリフ以降、閉塞感の漂いつつあった業界に、再び活気は戻るのか? まずは、ラパマイシンを筆頭にiPS創薬が活発化することを願ってやみません。
(文・栗山 鈴奈)