ここ最近、スマートフォン対応のニュースが業界内を駆け巡っています。少し前では、大日本住友製薬が2000台のiPhone4を導入。MR(メディカルレプレゼンタティブ=医薬情報担当者)を中心とした社員1430人に配布するということが、同社のプレスリリースにより発表されましたでした。
7月に大塚製薬がiPadを導入したニュースは記憶に新しいですが、ここへきて、武田薬品工業もこの10月よりiPhoneを2000人分、導入予定。エーザイ、塩野義製薬、第一三共などもiPhone/iPadの導入を検討しはじめたそうです。今年から来年にかけ、MRへのスマートフォンの普及は大きく加速しそうです。
各社、導入の狙いはというと、共通しているのは情報対応力と営業効率の向上。
携帯性に優れ、瞬時に立ち上がるiPhoneの利点を最大限利用することで、ノートPCよりも素早い対応を可能にし、顧客満足度の向上を見込むようです。大日本住友製薬によると、iPhoneの活用方法は、
- 自社製品の基本情報閲覧(各種改訂案内、添付文書、インタビューフォームなど)
- 副作用、相互作用の検索
- Webサイトにおける各種情報検索
- PCメールの閲覧・送受信
- 自社製品の納入実績の照会
- 営業報告書の入力
- Eラーニング
など。ほぼノートPCと変わらないことが想定されているとのこと。
ですが、iPhoneには、上に挙げた狙い以上に活用方法が広がっているのは確かです。
何を隠そう私自身、プライベートでiPhone4を所有しているのですが、期待していた以上に便利というのが率直な感想です。iPhoneはネットブラウジングやPCメールの閲覧・送受信はもちろん、音楽プレイヤーやボイスレコーダー、電子書籍ビューア、カメラとしての性能も併せ持っています。さらに、アプリを駆使することで、メールの添付のwordファイルを出先で編集したり、マインドマップを描いたり、フリーハンドのメモを残すことも可能です。
さらに病院を中心とした医療業界では、製薬メーカー以上にiPhoneの導入が進んでいます。富士フイルムやAZEをはじめとする企業に医療用ソフト開発の動きが見られるほか、医師向けのEラーニングアプリの配信も始まるなど、医師がiPhone/iPadに触れる機会も増えていますから、ちょっとした会話の接点にもなっていくことでしょう。あるいは、iPhone・iPad同士の互換性を利用した、各種医療機関とのコラボレーションも期待できるかもしれません。支給されたiPhoneをいかに活用するかで、これからは営業活動のあり方も変わっていくかもしれません。
しかし、iPhoneの普及は、実は喜ぶべきことばかりではありません。病院の電子カルテ化が看護師にもたらした問題と同じことを、MRにも与えるかもしれないからです。(その2.へつづく)
(文・須藤 利香子)