昨年の11月13日にこのコラムで取り上げた、小野薬品の抗がん剤「オプジーボ」。
同社にとって癌領域への本格参入の足がかりとなり、「相良社長が『社の今後十数年を背負う新薬』と位置づけていたオプジーボが、ふたたび注目を集めています。
オプジーボことニボルマブ/抗PD-L1抗体(ヒトPD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体)は、ほくろのがんと呼ばれるメラノーマに対する効能で承認を得ていました。
がん細胞にとって天敵であるT細胞の免疫を高め、活性化させることで、がん細胞を死滅させる同薬剤のメカニズムは、応用性が高く、当時から様々な癌への適応拡大が予想されていましたが、このほど、非小細胞肺がんへの適応拡大だけで、7500億円の市場を生み出すというシミュレーションが飛び出しました。
この予測は、シティグループ証券の山口秀丸氏(マネジングディレクター)が日刊薬業の取材に答えた中で出てきたもの。日刊薬業2015年1月28日号から引用します。
「国内で年間に死亡する肺がん患者約7万5000人(「WHO GLOBOCAN 2012調べ」)が全員この薬を使ったとすると、年間1000万円の薬剤費がかかるため、7500億円の市場が生まれる計算になる」
海外では承認申請早々、ブレークスルーセラピー(画期的治療薬)にも指定されたオプジーボ。後を追うかたちで、メルクやメルクセローノ、中外製薬、アストラゼネカが同じ抗PD-L1抗体をスタンバイ。5社の熾烈なシェア争いと共に、久しぶりの大型市場が生まれます。
また、オプジーボを巡っては、併用療法により抗腫瘍免疫活性が向上する可能性があるとされるモガムリズマブとともに、ブリストル、協和発酵キリンと昨年12月に開発提携契約が締結されていることを考えると、小野製薬やメルク、メルクセローノ、中外製薬、アストラゼネカはもとより、各社がプロモーション提携した際は、さらに多くの企業で、オンコロジーMRが必要になることが予想されます。
オンコロジー領域で実績のあるMRは、前回指摘したMR数の削減トレンドの中でも、特に市場価値の高いスペシャリストたちとされています。今後の求人推移に、注目したいところです。
(文・栗山 鈴奈)