先日3月11日で、東日本大震災からちょうど一年が経ちました。
昨年4月14日のコラムでも記しましたが、当時は医療機関の混乱、深刻なガソリン不足といった、MR活動自体がしにくい状況が続いていました。医僚現場では医薬品確保や計面停電への対応に追われ、大病院を中心に大量のけが人が搬送されていました。そのような中、医療の支援を目的に病院を訪れたMRの方々がいらっしゃって、感謝の声が上がったというお話を、上記のコラムでは紹介しました。
あれから一年。政府が住宅全半壊者や収入者を失った家庭を中心に、医療費を無料化する措置をとったこともあり、かつて震災による怪我など一時的な症状の患者さんを救っていた被災地の病院は、現在は震災の“後遺症”に悩む患者さんのケアを迫られています。
避難所や仮設住宅暮らしが長引いたことによる食生活の乱れから、栄養失調や高血圧、胃腸障害など…仮設住宅付近の診療所は常に混み合い、パンク寸前。中にはプレハブの病棟を増築して入院患者を受け入れるところもあるそうです。
鬱病やアルコール依存症など、ストレスから来る疾患を煩う方も増えていると言われています。3月5日の毎日新聞朝刊によると、福島市では震災以来、不眠症が27%、高血圧が13%増えたことが判明しました。福島市は家屋の倒壊までは免れたエリアですから、仮設住宅以外でも、原発の影響や度重なる余震から、心身ともに大きな負荷が掛かっていることがわかります。
今後、こうした潜在層にも治療の手が及んでいくことを考えると、まだまだ医療現場の闘いは続くでしょう。そのような中、震災前と比較して、医療従事者が減少していることが、課題視されています。小宮山厚労相が発表した内容によると、福島県内では震災前と比較して、看護師が170人・勤務医は17人それぞれ減少したことが判明しています。
一部の製薬メーカーでは、こうした被災地の状況を鑑み、東北エリアに力を注ぐ動きもあります。あるMRの方はこう言いました。
「当社の場合、震災以降、東北地方の売上はかなり増加しています。ただ、自分としては、売上も大切だけど、今こそMRの存在意義を問う重要な機会だと思って、地元の医療に貢献していきたいと考えています」
医師や看護師が不足する今だからこそ、MRの力が試される。その状況は、震災直後も今も変わらないですが、インフラが回復し、比較的思い通りにMR活動ができるようになったことで、むしろ増しているのかもしれません。
(文・栗山 鈴奈)