世界初の“デジタルメディスン”の承認が見送られた、というニュースが話題になっています。
開発したのは、大塚製薬と米国のベンチャー企業プロテウス・デジタル・ヘルス。両社のデジタルメディスンは、大塚製薬の抗精神病薬「エビリファイ」に、プロテウスが開発した極小センサーを内蔵。患者の体に貼り付けたパッチでセンサーの電波をキャッチし、服薬状況を即時に把握できる、というものです。
米FDA(食品医薬品局)は今回、このデジタルメディスンの承認を認めず、追加のデータを要求しました。大塚製薬とプロテウスは今後、承認を目指してFDAと協議を続けていく方針です。
最近、服薬アドヒアランスを向上させるために、医薬品にICT(情報通信技術)を取り込もうという動きが広がりつつあります。スイスのノバルティスは、COPD治療薬の吸入器にICTを組み合わせ、使用状況を把握できる次世代の吸入器を開発すると発表しました。
医療費の増加が世界各国で課題となる中、薬の飲み忘れによる医療費のムダを省くことには大きなニーズがあります。日本でも、2016年度の診療報酬改定をめぐる議論で、いわゆる残薬の問題が大きくクローズアップされました。
服薬アドヒアランスを向上させることは、薬の適切な評価にもつながります。アドヒアランスの低下によって「効きがいまいち」とか「思っていたよりも効果が悪い」と判断されずに済むからです。
「自社製品をいかに処方してもらうか」だけでなく、「いかにきちんと服用してもらうか」を考えなければならない時代になりました。ICTには大いに期待したいところですが、日々医療従事者と接しているMRにもできることはあるはずです。
「患者さんはきちんと薬を飲めていますか」
医療従事者にこう尋ねてみることから、まずは始めてみてはいかがでしょうか。
(文・前田雄樹)