前回のコラムでも紹介した通り、2016年は2015年末から続く特例拡大再算定(巨額再算定)やZ2など、新薬メーカーにとって前途多難の幕開けとなりました。
特例拡大再算定は、一定以上の年間販売額に達した薬の価格を強制的に引き下げる制度。年間1000億円以上で最大25%、1500億以上で最大50%引き下げとなります。Z2は、後発薬普及の妨げとなっている長期収載品にかかる追加引き下げ制度のこと。
ブロックバスターを生み出したところで薬価が引き下げられ、長期収載品よりもジェネリックが優遇されてしまう…。新薬メーカーとしては利益の柱を折られてしまうような新年の幕開けに、各社はどのような年頭所感を発表したのでしょうか。2016/01/06のミクスOnlineからの引用を交えながら見ていきましょう。
製薬メーカー各社の年頭所感
武田薬品のクリストフ・ウェバー社長は、「日本ではNo.1製薬企業として革新的な新薬の提供に集中する一方、テバ社と設立予定の合弁会社を通じ、ジェネリック医薬品および特許期間が満了した医薬品に対する社会のニーズに応えていく」との姿勢を示しています。
アステラス製薬の畑中好彦社長は、「製品価値の最大化」「イノベーションの創出」「Operational Excellenceの追求」の必要性を改めて強調し、眼科領域への細胞医療アプローチをはじめ、新たな疾患領域や新技術にも積極的に取り組む姿勢を強調しました。
第一三共の中山讓治社長が語ったのは、2015年から引き続き「新薬事業への回帰」路線。「必ずパテントクリフを乗り越え、新しい成長が始まる」というフレーズも印象的でした。
エーザイの内藤晴夫社長は、「次期中期経営計画のスタートやEAファーマの発足など、重要な節目を迎える1年となる」と語り、エーザイ本体としてもハラヴェンとレンビマの適応拡大を進めつつ、抗てんかん剤ペランパネルの国内承認に向けた準備を進めるとしました。
大日本住友製薬の多田正世社長は、10 年後にがん・アンメットニーズ・精神神経・再生・細胞医薬領域で「他社にはない、特徴ある製品に満ちた企業になることを目指す」とし、、研究開発への投資と人事制度改革を明言しました。
各社とも、特例拡大再算定やZ2があったとしても、研究開発の手綱を緩めない姿勢が鮮明に現れています。
とはいえ、日本製薬団体連合会の野木森会長の言葉を借りれば、特例拡大再算定は「製薬業界には『我慢しろ』と言うが、きちんとした議論ではない」(日刊薬業2016年1月5日号)と述べるように、業界にとって非常にアンフェアな制度であることに変わりません。
さっそく1/20には特例拡大再算定の対象として、次の4成分6品目が対象となりました。
- ・サノフィ…プラビックス錠(抗血小板薬)
- ・ギリアド…ソバルディ錠/ハーボニー配合錠(C型肝炎治療薬)
- ・中外製薬…アバスチン点滴静注用(抗がん剤)
果たして、対象となったメーカーはどのような策に出るのか。
MRBiZとして、今後も各社の動向に注目したいところです。
(文・須藤 利香子)