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武田薬品工業 初の外国人社長誕生に見る国内製薬メーカーの今後

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[ 2013年12月05日(木) ]

11月末、製薬業界に1つ大きなニュースが舞い込みました。

あの武田薬品工業が、初めて外国人をCOO(社長兼最高執行責任者)として起用する、異例の人事が発表されたのです。しかも、その人物とは、グラクソ・スミスクラインで、ワクチン事業を統括している、クリストフ・ウェバー氏。トップ交代のタイミングは来年の6月とまだ先ですが、このニュースは多くのメディアで報道されました。

「国籍や人種、性別や年齢で意思決定を束縛される時代ではない」(産経ニュース 12月1日(日)より)
という長谷川・現社長。日系企業として、代々日本人社長できた武田の今回の発表は、一見唐突な印象を受けるものの、会見では、実は以前からその準備が進んでいたととれる発言がいくつかありました。

そもそも、2011年にスイスのナイコメッドを買収した同社。それと並行して、社内では外国人シニアマネージャーが活躍し、徐々に外国人社長受け入れの体制を作っていった模様です。海外戦略が奏功し、現在では、世界3万人の従業員のうち、2/3は外国人が占めるほど。9月には新設されたCFOに外国人がつき、経営戦略を決定する重役、グローバル・リーダーシップ・コミッティーも、日本人は9人中4人のみ。社内の多国籍化が進んでいます。

今回の人選について、長谷川社長は会見で次のように語っていました。
「武田が世界的製薬企業の中で競争力を持つ会社に変わるために必要な人材を選んだ。ウェバー氏は新興国を含め世界で多様な経験を持っており、武田が次のステップに進むためのリーダーにふさわしいと判断した。社内に人材がいなかったという訳ではない。ただ世界的製薬企業に対抗するため、選考基準を高めに設定した」(日本経済新聞2013/11/30

ナイコメッドの買収以降、その商品は約70カ国に提供されるようになりました。クリストフ・ウェバー氏は、グラクソ・スミスクライン時代に「アジア太平洋地域担当上級副社長兼地域ディレクターとして新興国の市場で商売をしてきたうえ、3大陸7カ国に住んだ経験がある」(東洋経済オンライン11月30日より)とのことで、この起用が同社の新興国ビジネスをどう変えるのか、注目したいところです。

日本が誇る老舗の製薬メーカーとして、時には保守的な印象を受けることもあった武田薬品工業。国内トップの売上・規模を誇る同社が、グローバル化に邁進する姿には、新興市場に駒を進めざるを得ない現在の業界動向が垣間見えます。今後、武田同様の決断を行う国内企業が増えるとした場合、内資系企業の戦略・社風・体質にどのような変化が訪れるのか。将来像を見据える上でも、武田の変化にぜひ注目したいところです。

(文・須藤 利香子)

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