今回のお話は、MRとは直接関係ないものの、取引先の医療機関で起きている問題として、ドクターとのコミュニケーションをする上での、ちょっとした話のネタとしても、ぜひ頭の片隅に入れて置いて頂けたら幸いです。
先日、3月1・2日に行われた第99回薬剤師国家試験の結果が公表されました。厚生労働省のホームページによると、今回の受験者数は12,019名。うち合格者数は7,312名、合格率は60.84%になった、とのこと。
薬剤師出身のMRの方はピンとくるかもしれませんが、合格率が、前年比で20%近く落ち込んでいます。ここ20年を振り返っても、同試験の合格率はおよそ70%台後半を推移してきており、87・88回、90回、97回などは80%台にも到達しています。
薬学部の6年制への移行に伴い、現役学生の試験者が不在だった95・96回を除くと、これほどの落ち込みを見せたのは異例なこと。試験が年1回となった1987年(昭和62年 第72回)以降、過去最低の結果となりました。
初の6年制薬学部生が受験をした97回は、前回・前々回を挽回するように88.3%と過去になく高い数字をマークしただけに、そこからの2年連続下落は気に掛かるところ。
毎年80%台だった新卒学生の合格率は、今年70・49%をマーク。全体の合格率60.84%に対しては10%リードしているものの、例年と比べると低迷している印象です。薬学部が6年制に移行したにもかかわらず、4年制時よりも合格率が低迷してしまったのは、なぜなのでしょう。
日本薬剤師会の生出泉太郎副会長は次のようにコメントしています。「一気に薬大(薬学部)が増えた弊害が、顕著に現れたのが、今回の結果ではないか。今後、大学は収れんされていかざるを得ないのではないかと思う」(薬事日報2014年4月15日より)。
他にも2000年以降の薬学部新設ラッシュにともなう薬学部全体の定員増加が、受験者層の変化に影響しているのではないか、とする分析は多く見られます。
2年連続新卒採用がなかった翌年の2012年ほどではないですが、今年も薬剤師の求人倍率は高止まり(平成25年2月の厚生労働省データによると『医師・薬剤師』というくくりで7.5倍とわれています)。引き続き薬剤師の人手不足は続く見通しです。
MR(医薬情報担当者)とはまた違った意味で、医師のパートナーと言える、薬剤師。大きく落ち込んだ合格率からは、業界全体の将来に不安を感じる声も少なくはないようです。こんな時だからこそ、MRとして、ドクターや病院の力になれることがないか、グリップを強めておきたいところですね。
(文・栗山 鈴奈)