1. MR 転職【MR BiZ】HOME>
  2. お役立ちコンテンツ>
  3. コラム『未来図:MR』>
  4. 抗生物質と多剤耐性蔓延。戦いはペニシリンにはじまり、新薬に終わる…?

抗生物質と多剤耐性蔓延。戦いはペニシリンにはじまり、新薬に終わる…?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
[ 2013年04月04日(木) ]

高い効能を持つ反面、正しく使用されないと多剤耐性菌の蔓延というリスクを生みかねない…。そんな二律背反する側面を持つ抗生物質に、MR(医薬情報担当者)の皆さんは、日頃、どのような感慨を抱いていらっしゃいますか?

ヨーロッパ人口の1/3が命を落としたペスト、第一次世界大戦中のロシアで数千名が感染したというチフス、そして「1830年頃、ロンドンの5人に1人を死に至らしめた」と言われる結核など…。人類の歴史は感染症との戦いの歴史でもありました。

その戦いに大きな転換期が訪れたのは、1929年のこと。イギリスのアレクサンダー・フレミングがアオカビからペニシリンを発見。抗生物質の時代がはじまり、さまざまな細菌性感染症の治療に活用されていくようになったのでした。抗生物質の登場により、人類の寿命は向上したと言われています。

ところが1950年頃、抗生物質のサルファ剤が効かない赤痢菌が登場。以来、抗生物質への耐性を持つ多剤耐性菌が続々と現れ出しました。現在、多剤耐性菌が、院内感染という深刻な問題を引き起こしているのは、言うまでもありません。

抗生物質を使うほど、多剤耐性菌が蔓延する…。

こうした状況を受け、ノルウェーでは、国を挙げた感染症防止プロジェクトを25年前から敢行し、抗生物質の処方を控えたことで、耐性菌の少ない環境を築くことに成功したとされています。成功の背景には、ノルウェーの“世界的福祉国家”としての様々な取り組みがあります。例えば、国民は原則的に担当医をあらかじめリストから選択して登録していたり、体調不良時の有給休暇が保証されていたり。

一方の日本は、かかりつけ医もまちまちで、体調不良時に休みも取りづらい、ジェネリック薬の普及率もノルウェーとは比べものにならない…という状況。抗生物質は、安易な処方に否定的な声もあるものの、細菌感染症の治療や、衰弱時の二次感染・肺炎防止に、依然、必要性の高い存在です。

人類と多剤耐性菌のレース。ここへきて、思わぬ展開を迎えようとしているのをご存じでしょうか。去る3月28日のニュースで、多剤耐性菌の持つ抗生物質への耐性の詳しいメカニズムが判明したことが報じられたのです。

細菌などの細胞膜上にあり、薬物を細胞外に排出させる輸送体たんぱく質の立体構造を詳細に解明したと、東京大大学院理学系研究科の濡木理教授や菅裕明教授らが27日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。(中略)抗生物質を排出する機能を直接担う部分を特定。アミノ酸が連なった環状ペプチドを使い、排出できないように阻害することにも成功した。」(時事通信3月28日より)

今後、多剤耐性菌の輸送体の働きを阻害する機能を持つ新薬が実用化されれば、長きにわたって続いてきた人類と細菌の戦いの歴史に、いよいよ終止符が打たれるかもしれません。

 

(文・須藤 利香子)

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
このページのトップへ戻る