着実に進展を迎えるデジタル薬/モバイルヘルス市場。3月7日、塩野義製薬が発達障害を治療するスマートフォン向けゲームアプリの開発・販売権を米アキリ・インタラクティブ・ラブズ社から取得したことが発表されました。
取得したアプリは複数あり、このうち注意欠陥多動性障害(ADHD)治療アプリは、既に治験での効果が認められ、アメリカではFDAへ申請中。また、自閉スペクトラム症(ASD)の治験アプリも、大規模治験を控えている状況です。
こうしたゲームアプリでも、治験によって有効性・安全性を証明し、申請・承認へと進むフローは医薬品や医療機器と同じ。日本では、2017年に初めて治療アプリの治験が始まりました。株式会社CureApp(キュア・アップ)が開発している、ニコチン依存症治療アプリ「CureApp禁煙」です。こちらは今年度中にも国内承認を得られる見通し。実現すれば、医師がアプリを処方する時代が訪れます。
インドのリサーチ会社Mordor Intelligenceによると、モバイルヘルスの市場規模は2023年に2017年の4.5倍となる1100億ドルに達する見通し。日本国内ではスマートフォン普及率が約8割にのぼると言われる中、治療用アプリをはじめとしたモバイルヘルスの台頭はもはや時間の問題と言えるかもしれません。
低分子でもバイオでもなく、アプリという全く性質の異なる製品を、どのようにプロモーションしていくのか。ベンチャー企業や医療機器メーカーではなく、国内有数の製薬メーカーが販売を目指しているという点で、塩野義製薬がどのような体制を構築するのか注目が集まります。MR(医薬情報担当者)としても、目が離せないところです。
(文・栗山 鈴奈)