2月5日の当コラムでもご紹介したように、小野製薬がリリースした世界初の抗PD-1抗体・オプジーボは、承認申請早々、7500億もの売上が見込まれることになりました。
「2010年以来最大のブロックバスター? 7500億円を稼ぐオプジーボとMR求人の行方」
オプジーボは海外で画期的治療薬に指定されたほか、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの西川特任准教授が「手術・放射線・化学療法に次ぐ第4の治療法になるのではないか」(日刊薬業2015年3月19日号より)と評するなど、がん免疫療法への注目度を一気に引き上げる役割を果たしました。
これほどまでにオンコロジー領域で免疫療法が注目される理由とは何なのでしょうか。その一つは、副作用の軽微さがあります。従来の抗がん剤治療は、薬剤を組み合わせると副作用が重篤化し、患者の負荷が高まりすぎると治療の継続が困難になるリスクがありました。ところがオプジーボのような免疫治療では、理論上強い副作用が起きないうえ、一度免疫を獲得すると効果が長期的に続くという特徴があります。
免疫チェックポイント阻害剤は、まさにがん治療の常識を変えかねない新薬。各社では次の通り開発が活発化しています。
- 中外製薬…抗PD-L1抗体を2016年めどに申請予定
- アストラゼネカ…抗PD-L1抗体がP2試験
- MSD…抗PD-1抗体がP2試験
- ブリストル・マイヤーズ…小野製薬と提携し抗CTLA-4抗体を承認申請
加えて、免疫チェックポイント阻害薬は、他薬剤と併用することでより効果を高めるとも言われており、分子標的薬や抗がん剤を持つ企業は、安全に併用できる組み合わせを模索すべく、開発提携を進める企業も出てきています。アストラゼネカに至っては、抗PD-L1抗体に加えて、分子標的薬を初めとする数多くのパイプラインを所有。今後続々と新薬の発表がありそうです。
がん治療をめぐり、業界内では採用が活発化。オプジーボを発売した小野薬品工業では、当初30人だったMRプロモーション部隊が、今後最低でも100人以上の組織へと拡充されると言われています。そのことを踏まえると、上記に挙げたような他の企業でも、今後MR(医薬情報担当者)の募集が活発化する可能性があります。
スペシャリストMRの重要性が唱えられる今、がん免疫治療は、MRにとっても先進的な知識・経験を付けられる絶好の機会。各社の動向に注目です。
(文・栗山 鈴奈)