2010年問題で、一気に活気づいている後発薬メーカー。
ですがその反面、「もしかしたらジェネリックMRは不要になってしまうのではないか」と思わされるお話が、日刊薬業に載っていました。
「イスラエル・テバ社は米国で、医療機関の問い合わせに対応するためのサポートシステムを充実させることで、『MRゼロ』体制を実現」(2010年7月5日『日刊薬業』より引用)。
これは、興和デバの井上社長と日本ジェネリック製薬協会の澤井会長による講演会の内容を報じた文章の一部です。
さらに国内でも「日本ジェネリック製薬協会が今年4月から『ジェネリック医薬品情報提供システム』の運用を開始したことを説明。医療関係者が、ウェブサイトを通じて後発品の情報を収集できるよう利便性を高めたことで、メーカーの営業コスト削減に繋がることへの期待感を示した」と書かれています。
この記事を読むと、ジェネリックMRが今後不必要になるかのような錯覚を覚えます。
景気向上を期待していた人には、まさに寝耳に水。果たして本当にそうなのでしょうか。今回はジェネリックMRの今後について考察したいと思います。
確かに、ウェブサイトやシステムを充実させれば、医療関係者が自発的に後発薬の情報を把握できるようになります。MRが医薬情報を逐次説明する必要もないでしょう。ですが、これは安全な市場が確立されていて初めて成立することです。
アメリカよりも基準が緩慢な日本の後発薬は、医療関係者からの信用獲得が最重要課題。サイトやシステム上の“うわべ情報”だけでは、購買促進は難しいでしょう。日本のジェネリックMRは、単なる医薬情報担当にとどまらず、「医療関係者との信頼構築」という役割も担っているのです。
また、文化的な相違もあります。アメリカは合理主義的な国民性で知られていますが、日本は国としての歴史が長い分、慣習やしがらみも多く、アメリカほど合理主義に徹することができない側面を持っています。医薬品の選択は大きな責任を伴う問題。保守的で礼節を重んじる日本文化の中では、MRが人と人のつながりの中で、製品普及に貢献しています。
急に不要になるようなドラスティックな変化は起こりにくいでしょう。
不安になった人は、今もなおジェネリックMRの不足が叫ばれている事実を思い出してみて下さい。
政府によって「2012年までに後発薬のシェアを30%にする」という目標も掲げられ、今は後発薬メーカーが一気に攻勢に出るタイミング。サポートシステムの導入は確かにメーカーにとって追い風ですが、ジェネリックMRの立場を奪うほどのものにはならないでしょう。むしろMRの補佐的な役割を果たすのではないでしょうか。
とはいえ、情報提供システムと連携する、新薬担当と同等の専門知識を身につける…。今回の件を機に、各社ともジェネリックMRのあり方が変わる気がしています。医療関係者の声にこれまで以上に答えるための、新しいソリューション・スタイルの確立が、今後のジェネリックMRにとってのポイントとなるかもしれません。
(文・須藤 利香子)