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大塚製薬のリベンジに見る製薬業界におけるIoT活用の行方

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[ 2016年09月22日(木) ]

0151ビッグデータやAIを創薬に活用するなど、製薬業界の“IT化”が進む中、新たな一ページが刻まれることになるかもしれません。9月7日に、次のようなニュースがありました。

大塚製薬とNECは2016年9月7日、脳梗塞再発抑制薬(抗血小板剤)の服薬をアシストする「服薬支援容器」を共同開発すると発表した。(中略)両社が共同開発する服薬支援容器は、服薬時間をLEDの自動点滅で患者に通知する。錠剤の取り出しを検知し、服薬した日時をメモリーに自動保存するとともに、スマートフォンやタブレット端末に送信するIoT(Internet of Things)機能を備える。(日経デジタルヘルスより)

IoTは、Internet of Things「モノ(製品)のインターネット化」という言葉通り、製品をインターネット化させることで、従来にない利便性をもたらそうという技術。既に家電や自動車などさまざまな業種・業界で活用が検討されています。

例えば外出先からスマートフォンを使って家の鍵の施錠を確認したり、エアコンのスイッチをオンにしたり…。ビッグデータがどちらかといえば企業側のラボやマーケティング部門に革新をもたらすのに対し、IoTは消費者の生活に直接的な革新をもたらしています。

製薬業界では、例えば服薬アドヒアランスの向上。患者と医師・看護師がインターネットで繋がれば、日々の服薬管理や治療計画の遵守がよりしやすくなるといわれています。ですが、薬はエアコンや自動車と違って、人が直接体内に取り込むもの。薬の中にセンサーを埋め込んだとして、いくら排泄時に体外へ放出されるからといって、患者サイドには機械を飲み込むことに対する抵抗感・不安感がつきまといます。そしてそれが製薬業界におけるIoT活用の足かせの1つになっている、という見方もありました。

大塚製薬が2015年にアメリカで申請したデジタルメディスンは、エビリファイの錠剤に小型のシリコンチップ製の極小センサーを搭載することで、患者の服薬状況を管理するというものでした。FDAが承認受理したものの、追加データが要求され、承認が見送られた経緯があります。

そんな中、9月7日に報じられた「服薬支援容器」は、容器自体がスマートデバイス化されるため、精密機器を飲み込む必要もありません。まさに大塚製薬のリベンジともいえる製品です。

実は、大塚製薬以外にも、IoTの活用を本格的に進めている企業があります。それは、ノバルティス。同社では、IT企業のクアルコムと提携し、使用状況や使用時間を管理できる次世代型吸入器の開発が進められています。

まだまだ、製薬業界におけるIoT活用法については議論が尽きません。そんな中、大塚製薬とノバルティスの製品は、薬ではなく、服薬を助けるツール(ピルケースや医療機器など)をインターネット化する、という1つの方向性を提示したものといえるでしょう。

IoTはあくまで手段です。活用することそれ自体ではなく、クリアにしたい目的があって初めて導入が検討されるもの。一人でも多くの患者さんのQOL向上のために、今後も柔軟な技術革新が行われることを、願ってやみません。

(文・須藤 利香子)

 

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