1月13日の日刊薬業に、EFPIA Japan(欧州製薬団体連合会)のカーステン・ブルン会長のインタビューが掲載されていました。
MR(医薬情報担当者)にとっては、少しショッキングなものだったので、ここにご紹介したいと思います。
「国内MR数は約65000人だが、14年がピークになるのではないか。今後はMRが減り、それが日本のビジネスモデルを徐々に転換させると思う。ただ全世界的名トレンドとして、明らかに人員削減に向かっている。営業人員を減らすのが大きな部分だ」(日刊薬業1月13日より)
世界的に人員削減がなされているの背景として、ブルン氏は、
- 各国で医薬品の価格に対する圧力が高まっていること
- 研究開発費が高騰していること
の2点を挙げました。確かに、業界を代表する存在たるファイザーでは、2005年~昨年5月の9年間で5万6000人を超える人員削減を行ってきた経緯があります。直近のニュースでも、グラクソ・スミスクライン(GSK)が早期退職プログラムを実施したことが挙げられているなど、パテントクリフを睨み、人件費の削減に打って出る企業は決して少なくはありません。
問題はどの程度の人数が削減されるか、ですが、こんな記事がありました。
1月8日の日刊薬業で公開されたEFPIAの市場予測では、MR数が一定数以上になると生産性が却って落ちることが示唆されています。2025年の市場規模をシミュレーションした場合、MR数が現状通り65,752人の場合も51,800人に減った場合も、いずれも生み出す市場規模は100,000億円と変わらない、という見通しがされました。2割近いMRを削減したとしても、市場の規模が同じということは、今後のMR数削減の規模感を予測する上で、参考になる数字ではないでしょうか。
しかし、ここで心に留めて置きたいことがあります。それは、これまで増加してきたMR数が減少に転じたとしても、業界でMRの存在が重要であることは、今後も変わらないということです。営業的な立場からより専門的に、より薬のスペシャリストとして、MRの立場が上昇していくことでしょう。
プリン氏は、インタビューの中で日本のMRの今後について、こう語っています。
「MRを中心とした情報提供が根本的に変わるわけではない。医師への意識調査によると、MRのインパクトは依然として強い。医師はMRからの情報を重要視している。そうした国は世界でも珍しく、それが一夜のうちに劇的に変わるとは思えない」(同日刊薬業より)
氏は、こうも話しています。
「多くの企業が、よりフレキシブルな雇用形態に改めようとしている。正社員で雇用するよりも、契約MRを採用するようになる。また、医師との人間関係に基づく営業から、よりサイエンスに基づく営業にシフトしていくだろう」(同日刊薬業より)
もちろん、製薬メーカーではMRを正社員として抱えることにはなるでしょう。正社員MRの役割はより濃密なものとなり、その一方、社外のパートナーMRも存在感を増して行くことが予想されます。CSOはもちろん、個々のMRがより専門化としての力を持つことで製薬企業から頼りにされる、他業界の専門職・技術職のようなフリーランスMRが、台頭し始めるかもしれません。
いずれにせよ、今のうちから専門領域で経験を積む、または今後増加が見込まれるCSOでどの企業に行っても通用するスキルを磨く…MR個人としての価値向上が、今後の業界変化への最大の備えとなるでしょう。
(文・須藤 利香子)