今年4月から6月にかけて。ファイザーがアストラゼネカとの買収劇を繰り広げている中、業界では着々と再編が進んでいました。
4月22日、ノバルティスは160億ドル(約1.6兆円)でグラクソ・スミスクライン(GSK)の抗がん剤部門買収を発表。逆にワクチン事業(インフルエンザ除く)はグラクソ側に71億ドルで売却し、互いに研究開発を効率化する方針を打ち出しました。
5月6日には、バイエルがメルクの大衆薬部門をはじめとするコンシューマ・ケア事業を142億ドル(約1兆4500億円)で買収。処方箋のいらない一般医薬品メーカーとしてのシェアを伸ばしています。
「バイエルは一般用医薬品メーカーとして米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) に次ぐ世界2位の地位を維持する。バイエルのデッカーズ最高経営責任者(CEO)は声明で「今回の合併は、魅力的な非処方せん薬(市販薬)事業を世界的にリードする上で、画期的な節目となる」と述べた。」(5月6日ロイターより)
気になるのは、バイエルから受け取った巨額資金の使い道。メルクはそのうち38億5000ドルを使い、バイオ医薬品会社アイデニックス・ファーマシューティカルズを買収することが、先日6月9日に明らかになりました。アイデニックスといえば、近年次世代治療薬の開発競争が激化するC型肝炎の治療薬開発に強みを持つ企業。上市に至った製品こそまだないものの、3つの臨床治験が走っている模様です。
6 月 10 日のウォールストリート・ジャーナルによると、「メルク・リサーチ・ラボラトリーズのトップを務めるロジャー・パールムッター氏は「アイデニックスの臨床試験段階にあるC型肝炎治療薬の候補物質で、われわれが開発中の有望な治療薬を補完」できると述べた。1日1回の経口投与で高い効果を示す治療法の実現に寄与するとみている。」
この他にも、5月12日にはカナダのバリアントからの買収提案をアラガンが拒否。バリアントが敵対的買収に出る可能性も示唆されているなど、ここへきて業界再編がよりいっそう加速していく印象です。
このように、合併や合弁によって各社のパイプラインはめまぐるしく変わります。転職をご検討の方は、ぜひM&Aによって勢力図だけでなく、各社の開発部門がどう変容していくのかも着目下さい。
(文・須藤 利香子)