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偽造医薬品、広がる波紋

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[ 2017年01月26日(木) ]

偽造医薬品、広がる波紋ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」に、偽造品が見つかりました。今月17日、奈良県の薬局で偽造品の入ったボトル5本が見つかったと発表されましたが、その後、東京都内の卸売販売業者2社でも計9本の偽造品を確認。問題は広がりを見せています。

これまでは、日本の医薬品市場に偽造医薬品が紛れ込むことはないと思われていました。医薬品卸売業者を中心に、メーカーから医療機関・薬局まで、高度に管理された強固な流通網が敷かれているからです。日本で偽造医薬品といえば、「ネットで買ったED治療薬がニセモノだった」というのが典型。偽造医薬品が薬局で調剤されるとは、私も含めて誰も想定していなかったのではないでしょうか。

偽造品が見つかった奈良県の薬局は、ギリアドの製品を正規に取り扱っている医薬品卸とは別のルートから「ハーボニー」を仕入れていたといいます。厚生労働省や自治体のこれまでの調査(1月23日時点)によれば、偽造品の販売に関与していたのは9つの卸売販売業者。転売に転売が重ねられ、最終的に患者の手に渡ってしまいました。

偽造品の転売には、薬局や医療機関から余った薬を買い取り、別の薬局や医療機関に販売する、いわゆる「現金問屋」が関わっているのではないかと指摘されています。現金問屋はこれまでも、脱税や詐欺など不正の温床になっていると指摘されてきました。現金問屋はメーカーから直接、薬を仕入れるわけではありません。当然、偽造品が入り込む隙は正規のルートに比べると大きくなります。

偽造医薬品は、世界的に深刻な問題となっています。WHO(世界保健機関)が2010年に出したレポートによると、偽造医薬品の流通量は世界で推計750億ドル(約8兆6000億円)。途上国では流通する医薬品の1~3割は偽物だと言われますし、欧米の先進国でも正規の流通ルートに偽造品が紛れ込む事例も起こっています。

日本の医薬品市場はこれまで安全だと信じられてきましたが、今回の問題で必ずしもそうとは言えないことが明らかになりました。偽造医薬品の問題は、もはや海外だけの問題ではありません。一刻も早い対策が必要です。

 

(文・前田 雄樹)

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