前回までたびたび、今後のMRに求められるものとして、専門性をキーワードにコラムをお届けしてきました。今回は、少し異なった視点から、変わりゆくMRの役割と今後についてお話ししたいと思います。
もともと、プロパーと呼ばれていた製薬企業の営業部隊がMRとして再スタートを切ったのは、1993年、製薬協による「医療用医薬品プロモーションコード」の策定から。販売促進・PRから薬の情報提供や情報収集へと舵を切ったわけですが、一部では営業時代と変わらぬ接待が横行していました。
その後、「医療用医薬品製造業公正競争規約」が改訂され、2012年の4月から接待が禁止され、「製薬協コード・オブ・プラクティス」の策定を経て今に至ったMR。ドクターからは、コール数を主体とした従来のプロモーションモデルに対して、厳しい声が上がることも多くなりました。
ここ数年で、MRという職種の再定義が進み、よりルーツである営業職から脱却した、薬の情報を扱う専門職としての役割を担う存在へと変革しています。ですが、依然としてMRの守備範囲がどこまでかは、鮮明になっていない印象がありますね。
より具体的なMRの役割とその線引きは、ある程度、時代の流れと共に、その場そのときのニーズに沿って固まっていくものだと推測されています。つい最近では、「MRの仕事は副作用を未然に防ぐことである」とする声も上がっています。
7月25日、東京都内で開かれた第一回JASDIフォーラムのトークイベントの一幕で、日本製薬工業協会の田中徳雄常務理事による発言を、当日の様子を伝えたMonthlyミクスの2015年9月号から引用します。
「副作用は待つものではなく取りに行くものだ。(中略)副作用を未然に防ぐ、副作用が出たときにその程度を最小限に抑えるための情報活動がMRの仕事だと考えている」
先頃の臨床試験不正問題を受けて、MRが今後も医療関係者から信頼されるためには、たとえ自社製品の価値を落とすリスクがあるとしても、副作用情報を積極的に拾っていかなければならない。そのような文脈の中で出た言葉です。
Monthlyミクスの調査では、保険薬局の8割以上が安全性情報の入手経路のトップとしてMRを挙げています。MRによる副作用情報の収集と発信は、ドクターのみならず薬局にとっても待望されているもの。
地域包括ケアで、より医療機関同士あるいは調剤薬局との連携が重要視される時代性から言っても、MRによる正確な情報提供は、今後の医療の発展に欠かせないものとなるでしょう。患者の命を守るのも薬、患者の命を危機にさらすのも薬。MRは、患者の命を二重に守る番人へと、よりその役割を強固にしていくことでしょう。
(文・須藤 利香子)