トヨタやリクルートなど…ここ数年で大手企業を中心に、続々と在宅勤務制度の導入が進んだ印象がします。ご存知の通り、ダイバーシティにいち早く取り組んだ製薬業界では、2000年代後半頃から既に女性MRの採用に積極的なメーカーを中心にこうした取り組みを行ってきました。そんな同業界では、「制度の導入」から次のフェイズ「利用実績の増加」へとシフトを始めています。
製薬メーカーのMSDは、2009年から在宅勤務制度を導入。これまでは週一日までが原則でしたが、昨年2016年4月からは日数制限なしの在宅勤務が解禁されました。さらに対象者が管理職やMRを含めた全社員(正社員・契約社員)約3800人へと広がり、普及を進める一環として、「どんな理由でも在宅勤務可」というルールが加わりました。
マイナビニュースによると、「本当にしかるべき理由がなくてもどんどん在宅勤務を活用してほしいと伝えています。例えば、冬に寒いので外に出たくないという理由でも大丈夫です。大切なのは、自分らしい働き方を実践することによって生産性を上げ、より高いパフォーマンスにつなげること」。結果、この4月でルール改正から丸1年が経つ同社では、「月に3日、4日利用する社員が多くなり」「8月は450人ぐらいの社員が在宅勤務を取得」(マイナビニュースより)したとのこと。
日本イーライリリーやアステラス製薬では、子育て中の女性MR(医薬情報担当者)をメインターゲットとした時短勤務制度なども実施され、制度の設立だけでなく、利用者増加に向けた取り組みがなされています。
多くの企業にありがちなのは、制度が形骸化してしまった「実績なき制度」。主に自社の採用活動のため、ただ耳あたりの良い制度を作るだけでなく、いかに取得ハードルを下げ、従業員が活用できるしくみにするかが重要です。
求職者が面接で「産休育休は取れますか?」と聞いていた時代から、「産休育休の取得実績は何%ですか?」と聞く時代へと変わったように、近い将来、「在宅勤務制度・時短勤務制度の活用実績は何%ですか?」と聞くことが当たり前の時代が来るのも時間の問題。ダイバーシティの取り組みで他業界を牽引する製薬メーカー各社には、ぜひ、在宅・時短勤務制度のさらなる普及と業務効率の改善に力を注いでほしいものですね。
(文・栗山 鈴奈)