先日、米製薬大手のファイザーが、同じくアメリカの製薬企業であるアナコール・ファーマシューティカルズを約52億ドル(5700億円程度)で買収することが発表されました。既に両社の間では合意に至ったとのことです。時事通信によれば、アナコール株1株当たり99.25ドルで買い取り、債務も引き受ける。買収は7~9月期に完了する見通し。とのこと。
ファイザーと言えば、これまでにも買収による成長を続けてきた企業。2000年代に米国ファルマシア社を買収し、世界最大手に。その後もワーナーランバードやワイスなど…様々な企業を買収してきました。2014年にはアストラゼネカにもその触手を伸ばしましたが、あえなく破談となったのは記憶に新しいですね。
強力な新薬を会社ごと買収してしまう手法は「ファイザーモデル」と呼ばれていますが、園浦には多額の研究開発費を計上しているものの、思うように進まない新薬開発があります。純粋にファイザーから出た新薬を辿ると、1998年のバイアグラまで遡らなければなりません。
さて、昨年から今年にかけて、ファイザーではアイルランド・アラガンの買収を進めていました。目的は、いわゆるファイザーモデル買収ではなく、法人税の安い国に本社を移すことで節税を計る“タックス・インバージョン”にありました。そのため4月にアメリカ政府のインバージョン規制強化に伴い破談となったわけです。
今回のアナコール社買収は、
アナコールは、皮膚炎の治療薬などを手がけている。軽度のアトピー性皮膚炎の新薬「クリサボロール」を米食品医薬品局(FDA)に申請中で、2017年1月7日までに承認の是非が決まる。承認されれば年間20億ドル規模の売り上げを見込めるとファイザーはみている。
とあるように、ファイザーモデルの買収劇。2014年にノバルティスへ首位の座を明け渡してしまったファイザー。高脂血症治療薬「リピトール」の特許切れ以降、4年連続で減収が続く同社。収入の柱を確立できない中、今回の買収は巻き返しの一手となるか。ファイザー内ではエスタブリッシュ部門と新薬部門の分社化の計画も進められており、今後の動向に注目が集まります。
(文・須藤 利香子)