バイオ医薬品の特許切れが相次ぐ中、バイオシミラーがじわじわと存在感を高めています。
私が編集を担当している製薬業界向けニュース解説メディア「AnswersNews」で、厚生労働省のデータをもとに分析したところ、2016年度のバイオシミラーのシェア(処方数量ベース)はGCS-F製剤「グラン」で約7割、基礎インスリン製剤「ランタス」で約3割に達しました。いずれも15年度から大幅に伸びており、切り替えが進んでいることがうかがえます。
バイオシミラーをめぐっては最近、協和発酵キリンが腎性貧血治療薬「ネスプ」のオーソライズド・ジェネリック(AG)の承認を取得したことが話題になりました。AGとは、原薬・添加物・製造方法が先発品と“同一”のジェネリック医薬品のこと。先行品と“同等”とされるバイオシミラーには、依然として品質や有効性・安全性に対する懸念が根強くあります。そうした中で先行品と“同一”のAGが登場するとなれば、通常のバイオシミラーは太刀打ちできないかもしれません。
バイオシミラーに関する最近の話題としてもう1つ挙げられるのが、大手新薬メーカーの参入です。7月には、ファイザーが関節リウマチなどに使われる抗TNFα抗体「レミケード」のバイオシミラーの承認を取得。さらに、乳がんや胃がんの治療に使う抗HER2抗体「ハーセプチン」のバイオシミラーも、ファイザーと第一三共が近く承認を取得する見通しです。
バイオシミラーのマーケットはこれまで、中堅製薬メーカーと後発品メーカーが中心的なプレイヤーでした。強力な営業力を持つ新薬大手の参入により、バイオシミラーに対する理解が広がり、普及が一段と加速するかもしれません。
ファイザーや第一三共のバイオシミラーは11月、協和発酵キリンのバイオAGは12月に薬価収載される見通し。マーケットは今年末から来年にかけて大きな変革期を迎えそうです。
今はMR(医薬情報担当者)の採用が活発なバイオ医薬品の分野ですが、それが今後どうなるのか占う上でも、バイオシミラーのマーケットからは目が離せません。
(文・前田雄樹)