当コラムでもとりあげましたが、昨年12月、武田薬品工業が自社初となる外国人COOを起用する人事を発表し、反響を呼びました。その人物が元グラクソ・スミスクラインのワクチン事業統括者・クリストフ・ウェバー氏とあって、内資系企業の戦略・社風・体質にどのような変化が訪れるのか、ぜひ注目したいと書きました。ウェバー氏の就任は今年の6月とまだ先ですが、早くもその影響か、武田には変化が現れています。
それは、来たる4月1日付でスタートする領域担当MR制です。
2月24日の武田薬品工業のプレスリリースによると、武田薬品工業では『「循環器・糖尿病・代謝性疾患」「消化器・中枢・泌尿器・骨・免疫疾患」「オンコロジー」の3つの疾患領域それぞれの製品を担当するMR体制に再編し、本年4月1日から、本体制に移行する』とのこと。
これまで、MR(医薬情報担当者)1人ひとりが全製品を担当するジェネラルMR制を取ってきた武田だけに、一見唐突な印象も受けるこの発表。ですが、今になってみると、2013年にその布石があったようにも思えます。
2013年5月10日のミクスonlineより。武田薬品工業は『営業体制を改め、全製品を担当する「ジェネラルMR」をベースとしつつ、彼らをサポートする専門MRを配置し、営業組織が一体となって活動する「ハイブリッドMR体制」を構築して いくことを明らかにした。(中略)具体的には、MR数はこれまでと変わらず2000人体制で展開する。この多くが「ジェネラルMR」だが、▽がん・免疫専門MR▽ネシーナ専任MR▽エンブレルに活動の比重を置いたMR▽整形外科領域専任MR――が必要に応じてジェネラルMRをサポート。情報の量と質の両面から、医師らの医薬情報に対する満 足度をより向上させる。』
このように、ジェネラル制の特徴を活かし、徐々に昨年から専門MR化に取り組み始めていた武田。今回の領域担当MR制への移行でも、いかにもジェネラル体制をとり続けてきた武田らしいスタイルが取られています。
今回の発表では、領域担当制となっても、MRが全製品に関する教育を受けることに変わりないことがわかっています。そして、ドクターから受けた質問には担当領域以外のものであっても答えるという、「ジェネラル体制の良さを活かしながら、より専門性を高めていく」(日刊薬業2月25日号)方法が採られることになる模様。まさに昨年のハイブリッド型からの流れを受けた、新しい領域別体制と言えるでしょう。
ジェネラルの利点を知りながらの領域別体制を取れるのは、武田の無二の強み。この判断は、他の製薬メーカーに対してどのような影響を与えるのか…目が離せませんね。
また、同じく日刊薬業の記事で「これから出てくる製品の数を考えると、ディテールの数は間違いなく足りない。(MR数は)徐々に増やし始めている」と武田薬品工業・岩崎医薬営業本部長が語っていることから、武田におけるMR採用の活発化にも注視したいところです。
(文・須藤 利香子)