8月5日、協和キリンの腎性貧血治療薬「ネスプ」のオーソライズド・ジェネリック(AG)が発売されました。バイオ医薬品のAGは国内初です。
AGとは、原薬・添加物・製造方法が先発品と“同一”のジェネリック医薬品のこと。先行品と“同等”とされるバイオシミラーには、依然として品質や有効性・安全性に対する懸念が根強くあります。ネスプをめぐっては、JCRファーマと三和化学研究所の2社がバイオシミラーを申請中で、11月に発売となる見通し。“同一”のAGと“同等”のバイオシミラーは、市場でどのような競争を繰り広げるのでしょうか。
協和キリンは今年のネスプの売上高を、AGとの合計で前年比10%減となる484億円と予想しています。国内初のバイオAGは、どれくらいのスピードで先行品からの切り替えが進むのか。バイオ医薬品を販売するほかの製薬企業の戦略にも影響を与えそうで、販売動向が注目されます。
腎性貧血治療薬の市場では、もう1つ大きなイベントが控えています。新たな作用機序となるHIF-PH阻害薬の登場です。アステラス製薬のロキサデュスタットが年内に承認される見通しで、田辺三菱製薬も7月にバダデュスタットを申請しました。ほかにも、グラクソ・スミスクラインやバイエル薬品、日本たばこ産業が臨床第3相試験を進めています。
ネスプが注射剤なのに対し、HHIF-PH阻害薬は経口剤で、患者にとっては利便性の向上が期待されます。効果もネスプに劣らないとされ、治療の主役が入れ替わるかもしれません。
AGの発売と、新規作用機序の新薬の登場。MR(医薬情報担当者)としても、大きな転換点を迎える腎性貧血治療薬の市場から目が離せなくなりそうです。
(文・前田雄樹)