オンコロジー領域と言えば、先日、ファイザーの経口ALK阻害薬「crizotinib」に関するニュースがありましたね。
がん以外の領域の人でも、各種メディアを通して眼にした人も多いのではないでしょうか。
今年の6月にシカゴで開かれたASCO2010で発表された、ファイザーの「crizotinib」。
同薬は、2007年に日本の間野教授(自治医科大ゲノム機能研究部)が発見した、肺がんの原因遺伝子・活性型チロシンキナーゼ「EML4-ALK」融合遺伝子への効果が見込まれているものです。
実はこの「EML4-ALK」融合遺伝子は、従来の肺がんの阻害薬では効果を得ることができませんでした。
通常、同じ病気なら使う薬は基本的に一致するものですが、がんという病気は効く薬が同じとは限りません。ただでさえ薬物は効き目(効能だけでなく血中濃度や副作用までも)に個人差があるものですが、がんの場合、がん種が同じでも異なる原因遺伝子に対しては、特効薬が全く効果を発揮しない場合があるのです。
もしも原因遺伝子を見誤れば、効果のない薬を投与して、いたずらに副作用で患者を追い詰める結果を招きかねません。診断薬を用いて、分子標的薬を投与する前に効果をシミュレーションできれば、「効果が見込める患者にのみ投与する」という効率的な治療が可能になり、患者を二重に守ることができるのです。
診断薬と、ピンポイントに高い効果を発揮する薬を組み合わせれば、効果は最大限に高まります。ロシュやジェンザイムなどの外資系製薬メーカーでは、個別化医療への取り組みとして、新薬だけでなく診断薬もセットにして開発。海外では同時申請が盛んになってきているそうです。
現在、アンメット・メディカル・ニーズからオンコロジー領域は注目を集めていますから、これからこの領域に参入しようという方もいるでしょう。その場合には、ぜひとも一度立ち止まって、業界を見渡してみて下さい。新薬だけでなく、MR(医薬情報担当者)としては一見なじみの浅い診断薬事業にもしっかりと着目していくことで、より厳密に将来性のある企業を見分けることができるかもしれません。
(文・須藤 利香子)