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アクセス制度(日本版CU制度)の実現と製薬企業各社の今後

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[ 2012年12月13日(木) ]

アクセス制度とMR・製薬会社の今後12月3日の日刊薬業に「『日本版CU制度』創設向け実地調査」という記事が掲載されていたのを、ご覧になりましたか。「日本版CU(コンパッショネート・ユース)制度」と呼ばれているのは、「アクセス制度」のこと。簡潔にお話しすれば、治験とは別に、未承認薬を患者に使用してもらうことができる制度です。

がん患者を始め、進行性の高い難病患者の間では、ドラッグラグは依然として深刻な問題を孕んでいます。「使いたいけど待てない」そんな一刻を争う問題に、アクセス制度は少し前に政府が今通常国会での法案提出を見合わせた経緯があります。しかし、その後も別枠として未承認抗がん剤の使用制度の議論が進められるなど、患者さんの声が無視できない状況が続いていました。

今回のニュースは、一度頓挫しかけたかに見えたアクセス制度について、13年度中に各病院で調査が行われるということでした。いよいよ導入に向けて動き出したということでしょうか。

実は1990年代にも、これと似た制度として「安全性確認試験」というものが導入されたことがありました。当時はドラッグ・ラグ問題の真っ直中。治験以外にも、未承認の薬を利用できるとあれば、治験対象外だった患者はもちろん、製薬会社側にとっても大歓迎のはずでした。

ですが、実際の反応は全くの逆。製薬会社は厚生労働省の安全性試験の協力要請にほとんど応じようとしませんでした。それは下記のような背景があったからです。

・ 確認試験に使用する薬剤費は、原則製薬会社側の負担となる

・ 本来であれば治験の対象外となる患者に投与したことで副作用が起きやすくなった

・ 安全性確認試験の結果が全て承認申請用のデータとして扱われてしまう

・ そのため新薬開発の遅延にも繋がってしまった

利益になるどころか、これでは大幅な負担増。リスクを全て製薬企業が被る形になってしまったため、各社とも非協力的にならざるを得なかったというわけです。

今回、厚生労働省が薬事法を改正してまで導入を検討しているアクセス制度では、対象患者に何らかの基準を設けるなど、安全性確認試験の失敗が活かされた議論がなされています。さらに今回は、日本製薬団体連合会や、卵巣がん体験者の会スマイリーといった様々な団体からの意見も議論に反映され、以前よりは多面的な検証が行われている様子。

ですが、現時点ではまだ薬剤費をどこが負担するのかなど、肝心な議論には決着が付いていない模様です。アクセス制度は、特に新薬の承認を待てない進行性の難病患者をはじめ、多くの人々の希望となる素晴らしい可能性を秘めています。しかしながら、議論を急ぎ、過去の繰り返しになれば、特許切れ問題であえぐ業界の経済をよりいっそう圧迫しかねないデリケートな問題。製薬企業の一員であるMRとしても、アクセス制度が新薬開発の遅れや利益の圧迫を生んでしまうとあれば、とても人ごとでは居られません。

過去の経験と欧州モデルに学びつつ、患者と企業側、それぞれがwin-winになる制度が花開くかどうか。次回の議論は16日に予定されているようですが、今後の行方を見守りたいところです。

(文・須藤 利香子)

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