各社、新規シーズの探索や高まりつつある安全基準への対応から新薬開発に苦慮する中、昨年頃からドラッグリポジショニングという手法が注目を集め始めています。既にご存知の方も多いとは思いますが、今回はこのドラッグリポジショニングとは何なのか、解説したいと思います。
ドラッグリポジショニングとは、
開発が途中で中止された化合物や発売済みの製品について、新たな適応を探索し製品化するという手法(日経バイオテクONLINE Vol.2119 )
のこと。一から新薬を創出するよりも効率的にリリースへとこぎ着ける確率が高く、鈍化した創薬サイクルを活性化させることができます。
適応拡大との違いは…
「抗がん剤を別のがんに使う薬剤として開発するのが一般的な適応拡大だとすれば、DRは既存薬の作用機序などを解明し、当初の開発意図とは別の疾患領域も対象とする、よりダイナミックな開発手法だ」(日刊薬業2015年2月16日号より)
ドラッグリポジショニングのメリットは、
- 開発が早い(安全性試験などの過程を短縮できる)
- 失敗リスクが低い
といった、開発工程を効率化できる点にあります。ドラッグリポジショニングの研究に詳しい慶應大学薬学部の水島徹教授がドラッグリポジショニングで「(企業経営の)地盤を固め、チャンスがあれば(ゼロから開発する)新薬やブロックバスターを狙ってはどうか」と話す通り、年々高騰する各社の研究開発費にも、ある程度の歯止めを掛けられるのではないか、とされています。
一方、デメリットは、
- 薬価が低く設定される可能性がある(既存薬扱いになるため)
- 後発薬が適応外使用で市場を上塗りしてくる可能性がある
の2点に加え、効率的であるがゆえに、通常の新薬開発を敬遠する企業が出始める、創薬にかかる予算が減らされる、など業界の発展を鈍らせてしまう恐れがあるということです。
現在、ドラッグリポジショニングへの対応は、外資系企業ほど積極的で、日系企業は取り組みが遅れがちと言われています。
ですが、2012年に武田薬品工業がいち早く専門部署を設立して以降、「そーせいグループのグリコピロニウムはブロックバスターになる可能性がある」と報じられていたり、ジーンケアがドラッグリポジショニングで肝臓がんの再発抑制薬の開発に取り組んでいる他、4月にはアステラスも専門部署の立ち上げを予定。
まだまだ問題は多いものの、年々期待は高まっているというのが現状です。この動きが本格化すれば、新薬リリースのサイクルもより早まることが予想されますから、MRとしても注視しておいて損はないニュースだと思います。
(文・栗山 鈴奈)