4月の薬価引き下げで国内大手11社の2018年度の売り上げが2400億円程度減る見込み――。こんな記事が、3月21日付の日本経済新聞に掲載されました。
厚生労働省の発表によると、4月に行われる薬価改定の改定率(引き下げ率)は7.48%。国内の医薬品市場を10兆円と仮定すると、このうち7500億円ほどが一瞬にして消えてしまう計算です。
膨張する医療費の抑制を目的に、政府は今年4月から薬価制度を大きく見直します。特許期間中の新薬の薬価を実質的に維持する「新薬創出加算」は、条件を厳しくして対象品目を大幅に縮小。長期収載品の薬価は、長期的に後発医薬品と同じか近い水準まで引き下げられます。主力品が20%以上の薬価引き下げを受ける企業も少なくありません。「今回の改定はエグい」。そんな声が、業界内のさまざまなところから聞こえてきます。
冒頭の日経新聞の記事によると、薬価改定による売り上げの減少額は「国内売上高の大きい武田薬品工業や第一三共で300億円台、引き下げ率の大きいオプジーボを抱える小野薬品で300億円弱などとなるもよう」といいます。
今年はじめには、ダイヤモンド・オンラインがMSDで早期退職が行われたことを報じました(「製薬企業の花形職種に冬到来、大手で希望退職に400人殺到」2018年1月17日掲載)。日経新聞は別の記事で「リストラの機運が高まってきた」と伝えています(2018年2月17日)。
国内の製薬企業は、薬価制度の見直しにより事業構造の変革を迫られています。武田薬品工業やアステラス製薬、中外製薬などは、相次いで長期収載品を他社に売却しました。新薬創出加算をとれる革新的新薬の開発が求められる一方、収益環境は厳しく、MRもこのままとはいかないでしょう。
米IQVIA(旧クインタイルズIMS)が発表した世界市場予測では、日本は先進国で唯一、向こう5年間でマイナス成長になるとの見通しが示されました。市場が停滞する中、各社がどんな生き残り策を打ち出すのか。4月から始まる新年度は、日本の製薬業界にとって大きな転換点となるかもしれません。
(文・前田 雄樹)