わたしは久しぶりに祖父の家に行ってきました。といっても、のんびりできたというより、けっこう忙しい毎日で。片田舎にある小さな農村で、祖父母も高齢のため、長期の休みになると親戚一同が集まって、農作業を一緒に手伝うのです。
久しぶりに会うと、親戚のおじさん・おばさんは何だか年取ったなぁ…と思うと同時に、そういえばお酒を飲む量が少なくなったし、タバコを吸う人もいなくなりました。昔は休憩中によくお茶菓子を食べながらタバコをくゆらせていたのに…。数年前、わたしの父が血液癌を煩ったことをきっかけに、みんな健康に気遣ってタバコをやめたのだそうです。
さて、そんなゴールデンウイーク中、こんなニュースがありました。
「「喫煙者は採用しない」企業広がる 製薬会社に書店、靴店…」(J-CASTニュース2013/5/ 4 より)。
内容は、新卒・中途採用問わず、「「喫煙しない」ことを採用の条件とする会社はここ数年増えている」というもの。記事の中ではファイザーについても取り上げられていました。 ファイザーが以前から雇用者の禁煙補助に取り組んでいるのはご存じの通りです。同社の取り組みは、経口禁煙補助薬のチャンピックスを発売した2008年より、就業時間内は全社禁煙化。結果、30%弱だった社員の喫煙率は1年で15%まで減少しました。その後、2010年より「喫煙者ZERO宣言」、2011年の6月からは禁煙を就業規則化と、オフィス外でも就業時間中は喫煙が認められなくなりました。外勤型のMR(医薬情報提供者)にとっても全く他人事ではなくなったわけです。
これだけだと社員に禁煙を強いているだけのように思えますが、ファイザーでは、社員の禁煙のための治療費を企業側が全額負担しているそう。経口禁煙補助薬を商品に持つ、禁煙治療のリーディングカンパニーとしての本気の取り組みが伝わってきますね。
企業の採用には、男女雇用機会均等法や労働組合法をはじめ、様々なルールがあります。ですが、「非喫煙者だけを採用する」ことに対して明確な規制はありません。また、上でご紹介したニュースの中でも「健康増進をうたっている会社の社員が、スパスパとたばこを吸っていては説得力に欠けるし、イメージもよくない。 他社との競争や企業イメージのうえでも、「喫煙しない」人材が求められている」と語られているように、最大の目的は社員の健康増進と、製薬会社としてのブランドイメージの向上。人々の健康に関わるこの業界では、社員の非喫煙化が大きな意味を持つため、ファイザーに続きたいと考える企業も少なくないのでは、と言われています。
ファイザーのように治療費まで負担する企業がどれほど出てくるかは未知数ですが、社員の非喫煙化・非喫煙者の採用に力を入れる企業が増えていけば、当然、タバコが転職で不利になることも。喫煙者にとっては耳の痛い話ですが、友人のMRは「病棟内の禁煙化も進む昨今、またひとつ、禁煙のキッカケができたのかも」と前向きに捉えていました。
(文・栗山 鈴奈)