少し前ですが、厚生労働省のジェネリック医薬品使用促進に向けた新たなロードマップが発表されました。
後発薬普及のロードマップといえば、2007年の『アクションプログラム』。「2012年度末までに後発医薬品の数量シェアを30%以上に」という目標でしたが、3月末時点のシェア率は25.6%にとどまりました。そんな中、今年に入って新たに定められた普及目標は、「2018年3月末までに60%以上」。「日本に近い水準であるフランスやスペイン並みの60%を5年間で目指す」と厚生労働省はコメントしています。
数字だけを見るとかなり高い数値に見えますが、これは今回からシェア率の計算方法が変わったため。シェア率を巡っては、厚生労働省のページにも「諸外国の際については、出典および定義に差異があるため、単純には比較できない」とあるように、他の国と日本の普及率を一様比較できない状況にありました。
そのため厚生労働省は「国際的な比較を容易にしたい」という理由から、これまでの「医薬品全体におけるジェネリックの普及率」から、「長期収載品とジェネリック医薬品の合計に対するジェネリック医薬品の普及率」にあらためた、というのが背景のようです。つまり、60%という数字は、新薬を除いた市場のシェア率を指すものとして制定されたものです。
新たな目標であるシェア60%は、イギリスやフランスに匹敵する普及率です。
ですが、この数値を巡って、後発薬メーカーや関係者の間には、「少し目標が低すぎるのではないか」と落胆の声も。厚生労働省は「後発品の置き換えが進んでいることを考えると高い目標」としています。しかし、新基準の60%は、旧基準に照らすと、わずか34%程度でしかありません。
2007年当時の普及率が18.9%だったことを考えると、5年で34%を目指すというのは妥当な数字かもしれません。しかし、メーカー側にとってはどうでしょうか。昨年12月、このようなニュースがありました。
「日本GE学会はロードマップを策定する厚労省に対し、ジェネリック医薬品の普及率(数量ベースのシェア)として15年度末までに65%、17年度末までに80%という目標値を提言した」(ダイヤモンドオンライン2012年12月17日より)。
一刻も早い普及促進を望むメーカー側にとって、今回の目標は、本来であれば今年に達成しているはずの目標・30%を、そのまま5年後に先延ばしされたようなもの。2007年からの5年間を「普及の遅れ」ととるか、「予想を超える現実の厳しさ」と取るか…両者の温度差を浮き彫りにして、ジェネリック普及に向けたロードマップは折り返し地点を迎えました。後発薬メーカーへの転職、後発薬メーカーから新薬メーカーへの転職を考えているMRの方にとっては、しばらく目が離せない状況が続きそうです。
(文・須藤 利香子)