今回も、ソーシャル・スタイルの応用例で、自身の臨床経験を重んじる慎重派の先生の攻略法を考えてみましょう。
前回の「イノベーター&マジョリティ」タイプの先生と対極にあるのが、「フォロワー&マイノリティ」タイプの先生です。
このタイプの先生は、決して情報収集に興味がないのではありません。
MRが提示する情報は「いいとこ取りしたものだ」という先入観が強いのです。したがって、MRに頼らず自分でも情報を収集し、そのうえで自身の臨床経験に基づいて治療を決定したいと考えます。
MRがメリットだけを紹介しようものなら、先生に「疑念」という決定的なマイナスの印象が残り、以後ほとんど会ってもらえないこともあります。
なかなか会ってもらえない、やっと会っても冷たくされてしまうなど、若いMRにとっては「難しい先生」と感じてしまうタイプです。
「フォロワー&マイノリティ」タイプの先生は、自身の治療経験を重視します。エビデンス至上主義ではありません。エビデンスにある患者さんの顔は見えませんが、自身が抱えている患者さんの顔や背景はすべて頭に入っています。
また、副作用情報、特に「使用上の注意」には慎重に対応し、情報にはしっかり目を通します。MRが自社品の「いいとこ取り」の特徴ばかり説明すると、「特徴より先に説明するところ(安全性情報)があるだろう!」と不快感を示します。
他剤比較には特に慎重にならなければいけません。根本的に「差別化」を好みません。
したがって、MRは絶対に優劣を語ってはいけません。先生には「ジャッジは自分でする」という強い信念があります。
決して「マジョリティ」を否定するわけではなく、トレンドよりも自身の臨床経験を重んじる慎重派の先生と解釈してください。
「フォロワー&マイノリティ」タイプの先生は、若いMRにとって、「難しい先生」です。
しかし、決して「苦手な先生」にしないことです。苦手意識を持つと、必ず相手に伝わってしまいます。もし、どうしても攻略しなくてはならないキードクターがこのタイプの先生であれば、絶対に逃げないでください。
このタイプの先生は前述の「イノベーター&マジョリティ」タイプの先生より時間がかかり、なかなか相手にしてもらえません。
しかし、これはあなただけでなく他社のMRにとっても同じ条件です。MR嫌いのこのタイプの先生から信頼を得ることができると、圧倒的に他社より優位に立つことができます。
時間はかかりますが、「絶対にこの先生の信頼を勝ち取るぞ」という強い信念を持って取り組んでください。この強い信念が「熱意」となって相手にも伝わります。