もし先生に文献や参考資料を依頼されたら、何日以内にお届けしますか?
たとえば、薬剤部の先生に「おたくの製品○○○の代謝に関する文献をそろえてほしい」と依頼され、何も聞かずに引き受けて会社に戻ったとします。
基礎代謝に関する文献・資料はかなりの量になるはずです。これでは資料を全部そろえるまで数日間を要し、やっとの思いで1週間後にお届けしたとしても「随分遅いじゃないですか」と言われてしまいます。
「せっかく一生懸命そろえたのに…」と、思わず愚痴を言いたくなりますよね。
このケースの問題点はどこにあったのでしょうか?
それは、最初に文献・資料の依頼を受けた際、先生に詳細を尋ねなかったことが問題です。
先生とのコミュニケーションが足りていなかったと言えます。
このような場合、まず先生になぜ必要になったのか、依頼された意図や背景を聞くようにしましょう。
さらに、必要とする情報の範囲を絞ってもらいましょう。
その方が、先生にとってもあなたにとっても都合がいいからです。
詳細を尋ねることで、こんな答えが返ってくるかもしれません。
「実は来月、薬物代謝について講演することになったんだ。特に高齢者については掘り下げて、相互作用についてもまとめてみようと思っているんだよ」
このように教えてもらえると、依頼されたMRも対応が明確になりますね。
この場合、自社品○○○の高齢者に対する薬物代謝に限局した情報を翌日には持参するとよいでしょう。
す。
「第一報告」は先生のニーズのど真ん中のものを迅速にお持ちすることが重要です。あれこれと付帯資料はいりません。
さらに、1週間後にこんな風に情報をお持ちしましょう。
「もしお役に立てればと思い、代謝酵素に関する詳しい資料と相互作用に関する資料をお持ちしました」
「気がきくねぇ。ありがとう。随分助けてもらっちゃったな」
同じ文献の届け方でも、コミュニケーションを工夫することで、先生に感謝されるようになるのです。
大事なことは、質問(依頼)の目的を把握することです。
そして、最初から完璧を求めて資料収集に時間をかけるのではなく、まず中心となる資料を素早く提出し、先生のニーズのど真ん中のものを迅速にお持ちすること。
コミュニケーションを取りながらさらに必要情報を詳細な資料として追加するのです。
周囲と差をつけるには、この「コミュニケーション」能力をいかに磨くかということです。
「最近の若いMRはみんな優秀だよね。でも…」という言い回しを聞くことがあります。
最後の「でも…」はどういう意味なのでしょうか?
MRは知識はもちろんのこと、傾聴力、質問力、提案力も持ち合わせていなくてはなりません。
ところが、最近のMRは自社製品の特徴を一方的に説明するだけで、会話になっていないということです。先生方は「もっと我々の立場で物事を考えるコミュニケーション能力を磨いてもらいたい」と考えています。
単に文献を届けるだけの作業にも、沢山のコミュニケーションのポイントがあることが分かると思います。
20余年前、MRはプロパーと呼ばれていました。
この時代、彼らに必要な資質は「気合と根性」といわれ、「KDD(勘と度胸と出たとこ勝負)」などという言葉もありました。
これを全面否定することはできませんが、もう時代は変わりました。
最低限の学術知識・製品知識を持っていることは大前提で、さらにそれを伝える「コミュニケーション能力」が最も重視される時代なのです。