「P<0.05で有意に改善しています」
このフレーズは、皆さんが日常のMR活動でよく使っていると思います。しかし、この「有意な改善」を伝家の宝刀のように絶対的な根拠として紹介していませんか?
もしかすると、先生に疑念を持たれているかもしれません。
エビデンスの紹介では正確な表現をしなくてはならず、そのためには基本的な医学統計の知識が前提になります。
「有意」はイコール「絶対=100%」ではありません。もしP=0.04であれば、100人のなかで4人は改善が証明されなかったことになります。
先生にとっては、この4人の患者さんも治療しなくてはならないのです。
「有意な改善」を絶対的な根拠のように紹介されれば、「この4人はどうなんだ?」という気持ちになるでしょう。
逆に、A製品とB製品の臨床成績を比較して有意差が出なかった場合、有意差がないからメリットもないとは言えません。例えば、同等の結果が出ていて価格が安ければ、そのメリットを重視する先生もいらっしゃるでしょう。
では、どのように先生に紹介すればよいのでしょうか?
たとえば、有意差について説明すると同時に先生に意見を求めることです。
「有意に改善されておりますが、いかがでしょうか?」
「有意差は出ておりませんが、この改善の差を先生はどのようにお考えでしょうか?」
と先生に打診をしてください。
有意な改善に同意されれば先生が認めてくれた証になりますし、結論とは違った意見を聞くことができれば、先生の真意を確認することができ、疑念を残さないで以降の展開を考えることができます。
エビデンスは、公知された臨床上の科学的な根拠です。MR活動においてエビデンスの効果が絶大であることは言うまでもありません。
しかし、先生の治療方針の根拠には、先生自身の臨床経験も大きくかかわります。それを無視してエビデンスが100%絶対であるかのような一方的な表現をすると、反感を招くことはまず間違いありません。
先生の立場を無視しては、優れた臨床成績も価値のあるエビデンスも伝わりません。コミュニケーションになっていないということです。
あなたは、先生の治療方針を知っていますか?
先生の治療方針を知らずして、製品の説明はできません。エビデンスより先生ご自身の臨床経験が優先される場合もあります。先生の臨床経験をもとに、まず、先生固有の治療方針を確認する必要があります。
MRが紹介するデータは承認前のものや市販後調査、臨床研究で得られた結果ですが、どんなに有名な大規模臨床試験の結果であっても、先生にとってはあくまで「参考」です。
統計上の母数はあくまで「参考」であり、現実に高血圧症で受診している患者さんが先生にとって「真の母数」です。この「真の母数」の内容を把握すること、紹介したデータの中の患者さんの背景(年齢・性別・合併症の有無など)と、先生の目の前にいる患者さんの背景が重なっているのかどうかが、重要なポイントになります。
エビデンスを先生に受け入れてもらうためには、先生の治療方針を常に意識し、照らし合わせながら紹介することを忘れてはならないのです。