自分が担当しているエリアだけでも、さまざまなタイプの先生がいますね?
その先生一人ひとりに適したプロモーションを実践するのは中々に大変なことです。
まずは、臨機応変に対応するための「引き出し」を作るところからはじめましょう。
情報提供においては画一性をできるだけ排除し、その先生のためだけの「カスタムメイド」のプロモーションを実践することが理想です。
しかし、担当エリアや病院の先生一人ひとりに合わせてカスタマイズすることはほぼ不可能です。同じ学術資材を何百通りにも説明できるようになるには膨大な時間のトレーニングが必要となり、現実的ではありません。
この理想に近づけるには「引き出し」の数を増やすことです。
優秀なMRほど「引き出し」をたくさん持っています。先生との会話でどう展開が変わっても、持っている「引き出し」が多ければ臨機応変に対応できます。
では、「引き出し」をどのように作ればよいのでしょうか?
やみくもにパターンを増やしても意味がありません。
心理学でパーソナリティ理論というものがありますが、これは人間には一人ひとり固有の思考、表現、認知、判断、感情があり、これらを典型的な類型に当てはめようというものです。
アメリカの社会学者であるデービット・メレルは、理論派・現実派・友好派・社交派の4つの類型を作りました。これを「ソーシャル・スタイル」といいます。コミュニケーション能力の開発のひとつとして、相手のスタイルを認識し、相手の独自性として尊重できるようになることが重要であるといわれています。
「引き出し」を作ることは、ここから始まります。
タイプ別の先生の攻略を考える
ソーシャル・スタイルの応用例として、問題認識を「新規性」と「希少性」の2つの視点で考えてみます。
新規性を好む人と好まない人、これを「イノベーター」と「フォロアー」という類型とします。希少性も同様に分け、「マジョリティ指向」と「マイノリティ指向」とします。この2つの問題認識をマトリクスにすると、4つの類型ができます。
この4つの類型に、先生にとっての薬剤選択のプライオリティをパラメーターとして当てはめてみましょう。
これで4つの「引き出し」ができました。
そして、先生のパーソナル・タイプを尊重して、パラメーターを入れていきました。あとは情報提供したいと考えている内容を、このパラメーターを意識しながら4通り作っていきます。
ここでは「新規性」と「希少性」の2つの問題認識について考えましたが、さらに「専門性」(専門医と非専門医)、「疑心性」(先生にどれだけの信頼を寄せてもらっているか)などと問題認識を増やしていけば、類型は4から8、8から16と、どんどん増えていきます。
類型を増やすことに意義があるわけではありません。先生と面談する前の準備をすることに意義があるのです。そして、これを習慣にすることによって多くのパターンを体が覚え、結果として「引き出し」の多いMRになることができます。繰り返しますが、大事なことは準備を怠らないことです。
ひとつの学術資材の説明が何通りにもできること。
先生一人ひとりにカスタムメイドした情報提供ができること。これが自然にできればMR活動が何倍も楽しくなります。