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MRが営業力をつけるための対話術

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MRには、自社製品を伸ばすための営業力が不可欠です。対話を通して、医師や薬剤師との間に信頼される関係性を構築してゆかなくてはなりません。
医療領域の営業活動について造詣の深い医療コンサルタントの杉浦鉄平氏に、MRが営業マンとして成功するための説得力のある対話術について伺いました。

杉浦 鉄平 氏

  • セコム医療システム株式会社
  • マネジメント・コンサルティング部 部長/看護師

医師の「お困りごと」にフォーカスを当てよう

営業マンの対話は顧客の「お困りごと」にフォーカスしなくてはなりません。顧客のお困りごとには、夜も眠れないほど困っていることから、それほど切実でないことまで順位があります。上位のお困りごとにどれだけアプローチできるかが営業成績に反映されます。自分の顧客のお困りごとトップ3を明確に言語化してみましょう。実はお困りごとは顧客自身も明確ではなく漠然としていることも多いのです。

私はコンサルタントとして院長や事務長など病院の経営層と面会する機会が多いのですが、病院経営がこの先どうなるんだろうという漠然とした不安感とか、なかなか医師や看護師が集まらないとか、現場と経営層の間に危機感のずれがあるとか、さまざまなお困りごとを耳にします。しかしお困りごとの本質的なところは、ご本人たちもあまり明確にわかってはいないことも多いのです。経営の漠然とした不安の原因は財務表が的確に読めないので診療とリンクしたお金の流れが見えないとか、医師が集まらない理由は診療ニーズが満たされていないためだとか、看護師の応募が少ないのは人事制度が整備されていないからだとか、掘り下げて言語化することで整理されてくることもしばしばあります。

MRさんは医師に面会することが多いわけですが、先生方は経営のことよりは自分の専門領域にお困りごとがあるはずです。担当医師の周辺にあるお困りごとを察知してアプローチすべきです。「スタッフがなかなか協力してくれないんだよ」とか、「救急は忙しいし当直はあるし、やりたい診療なんかできないよ」とか、「内視鏡をもっとやりたいんだけど、肺炎や風邪まで診なくてはいけないんだ」とか。そういったお困りごとにまつわる他院の情報や改善事例をお伝えするなど、MRさんにできることはいろいろあるはずです。担当医師のお困りごとは何かを考え、上位3に入るお困りごとにアプローチすべきです。

狙い目は本業の周辺にある

医師のお困りごとというと、本業のど真ん中を考えてしまいがちですが、むしろ本業の周辺にあるお困りごとが狙い目です。たとえば私の場合だと、「患者さんの獲得に困っていませんか」と尋ねると、「困っている」と回答される顧客が多いのです。そういう方には「新規入院患者が減っている病院が近ごろ多いようですが、ある病院ではこういう着眼点でデータを集め、そこに見合う患者さんにアプローチしたら新患が増えてきました。そのケーススタディに興味ありますか」といった提案をします。

あるいは「経営者と現場の意識の違いが大きいと、なかなか現場は思い通りに動いてくれません。そういった悩みはありませんか」と聞くと、「それはいつも感じているよ」と返ってきます。そこで経営層と現場の乖離を小さくする方法を提案します。

このように本業の周辺のお困りごとでもニーズに合った話を持っていくと、コンサルタントとして評価していただけ、「もうちょっと詳しく聞きたい」と次回のプレゼンへつながります。要は、相手のお困りごとにアプローチし、それに対してベストの解決策を提示できるかどうかです。営業活動とは、相手のお困りごとと自社の商品やサービスをマッチングさせるお見合いである、と捉えるといいと思います。

顧客の「現状をつぶす」ことからスタートする

顧客に面会したとき、そこで関係性の構築ができるかどうかが営業の一番大事な本質だと思います。営業マンが顧客にアプローチしたときに、必ずしておかなければならないことがあります。それは「現状をつぶす」ことです。顧客は「これでいい」と思ってやってきた固定概念を持っているわけです。そのやり方をこのまま続けて何とかうまくやっていこうと普通は思っているわけです。いままで通りのそのやり方ではだめなんだということを、きちんと理解させること、それが「現状をつぶす」ということです。

たとえば院長や事務長に、どのような経営指標をチェックされていますかと聞くと、平均在院日数とか病床稼働率とか紹介率を見ているとみなさんおっしゃいます。「それでうまくいっているのでしたらそれを続けてみてください」と私は言います。しかしほとんどの病院はそれでうまくいってはいません。「経営をうまく行なって成果を出している病院ではどのような指標を取り入れていると思いますか。実はこんなところをチェックしているんですよ」と提示して、顧客にギャップに気づいてもらう。これが「現状をつぶす」ということです。これをやらずに単に自社製品の説明をするだけでは問題が明確化されず、顧客に必要とされる関係性の構築はできません。

MRさんの営業だと、医師には今まで行なってきた薬物療法の固定概念がある。それで治療がうまくいっているのだったらいいのですが、そうでもなさそうな場合、新たなこういう薬を用いて成績を上げている病院もあるといった情報をもたらせば、そこでギャップに気づき試してみようかなとなるかもしれません。

ただし、顧客はギャップを説明されるのは嫌います。説得とか攻撃と捉えがちです。特に先生方は何でも自分で決めたいし、コントロールされたくはないと思っています。頭ではMRの言う通りだと思っても簡単には行動につながりません。現状をつぶすためには、顧客が「自らギャップに気づいた」と思うように導かなければなりません。

顧客の未来を語れるか

どの会社のMRさんも自社製品をアピールします。「うちの製品はこういう製品で、これを使うとこういうベネフィットがあるんです」と、そこまでは誰でも言えるんですよ。しかし、「これを使うことによって先生の診療のあり方はこうなっていくんです」と、未来について語る人は少ないですね。われわれはwishと言っていますけども、顧客のwishが語れるかどうかが、できる営業とできない営業の大きな差です。

「先生はこれからこういう症例をどんどん集積していって、地域のためにこんな診療やりたいんですよね」と、相手のwishを理解して、それにマッチするベストソリューションを提示し、「われわれの製品がそこにお役に立てると信じてお話をさせていただいています」と言えるのが、できる営業マンです。

営業の本にはよく「顧客のニーズを引き出せ」と書いてありますが、ニーズを引き出すことは実際にはなかなかできません。なぜできないかというとニーズとは何かが定義ができていないからです。私は、「ニーズとは問題を解決したいと思う意欲であり、問題とは現実と理想のギャップである」と定義してみました。私たちがすべきことは、顧客の理想と現実を提示してやることです。そうすることによって相手はギャップに気づき、しかるべき行動が喚起されることになります。

MRとしてどんな付加価値を示せるか

MRさんが医師に伝える価値の物差しは本業そのものに関することでなくてもいいと思います。昔、ピザ屋さんがピザの中味ではなくて宅配方法で差別化しました。30分で届かなかったらお金を返すというものです。これは本業のピザ作りとは関係ないわけですが、わかりやすい付加価値でした。同じような製品だったら、顧客は付加価値で製品を選びます。MRさんが医師と関係性を構築できるかどうかは、付加価値を示せるかどうかにかかってくると思います。

たとえば、このMRが来ると地域のマーケットデータを持ってきて、ほかの病院とのベンチマークをやってくれるとなれば、それは医師にとって大事なMRになることができます。

「この領域の手術に関して、先生の症例数はこの地域で3番目です。在院日数をみると先生が一番短いです。それだけ診療プロセスがしっかりしているという評価につながるのではないでしょうか」。

このような話をすると医師は前のめりで聞きますよ。いま、医療の領域では行政が豊富なベンチマークのデータを用意してくれているので、あらゆるデータが入手できます。病院は本業で忙しいからそのようなデータを調べている余裕はないでしょうが、MRの皆さんもあまり使っていないようです。エクセルを使える人であれば誰でも簡単に公的機関からデータを引き出せる環境になっています。MR活動の差別化の1つとして、これらのデータを利用する価値はあると思います。

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