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横浜内科学会が構想する「MR研修セミナー」

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横浜内科学会では2015年夏に、MR向けの教育研修セミナーを計画しています。MRには自社製品のPRをするだけでなく、医療人として地域医療に参画してほしい、社会貢献活動も志向してほしいという要望を込めて企画されました。中心になって推進している宮川内科小児科医院宮川政昭院長に、横浜内科学会のMR研修セミナーが目指す目標について伺いました。

宮川 政昭 先生

  • 宮川内科小児科医院
    院長
  • 神奈川県内科医学会
    会長
  • 横浜内科学会
    名誉会長

さまざまな職種の接着剤として

この研修セミナーの企画意図は、MRが単なる医薬情報担当者ではなく、医療人として地域医療に参画できる道はないだろうかと考えたことです。診診、病診、病病、医患、患患とあらゆる形態の医療連携のネットワークの中で、MRが医療人としてさまざまな職種の接着剤となる可能性はないだろうか。地域医療を理解し、その内なる存在にならなくてはMRの将来はないのではないかと考えたからです。

こうした私の思いを横浜内科学会で話したところ、みなさんの賛同を得られ本年から実施することが決まりました。

企業活動としてのMRの営業行為を否定しているわけではありません。しかし現状のまま、自社に有利な情報をただ伝えるだけの営業を続けていれば、医師はMRを拒み、しまいにMRは不要となってしまいます。実際に訪問規制を強化する医療機関は増えつつあります。

本来MRの活動は、医師に適切な情報を示すことだけでなく、臨床現場で副作用や不都合な事象が生じれば収集して会社にフィードバックしなくてはなりません。それが本当は重要な活動です。なぜ有用なはずのMRの訪問が規制されてしまうのか、製薬企業は改めて考えるべきだと思います。

医師の本音が理解できる研修に

MRを医療人として、内なる存在として見たいがために行う研修です。MRに医療人になってもらわなくては困ることが今後たくさん生じてくるでしょう。多くの医療機関を回る立場だからこそ、基幹病院と診療所の懸け橋となったり、地域医療の潤滑油あるいは接着剤となってMRは活動できるはずです。薬剤師や訪問看護師、ヘルパーやケアマネージャ、そういう多職種の中にMRが入って活動できれば、地域包括ケアはより円滑に動くと思うのです。

このMR研修は、当初は何日かかけて行うことも考えたのですが、実際にMRの人たちの仕事とか講師の手配とかを考えると、1日で行うのが実際的だと考え、朝から晩まで1日かけて実施することにしました。地域医療にかかわる横浜市の内科開業医10人ほどを講師に予定しています。循環器疾患、高血圧・腎疾患、呼吸器疾患、糖尿病・内分泌疾患、消化器疾患、認知症、在宅医療などを切り口にして、患者さんをどう診ているかということを中心に話してもらう予定です。

医師はこういうことを考えているんですよ、と本音を話してもらう。医師のある程度の本当の姿が見える研修になると思います。第1回の実施は今年の夏ごろを予定しています。来年以降も発展的に継続する予定です。

MRに必要なのは社会貢献である

この研修会は製薬企業に対する挑戦だと私は思っています。あなたたちがやっていないことをやるんだよ、と。どこの製薬企業のホームページにも「社会貢献」と書いてありますが、実際にはほとんど何もしていません。売り上げに結びつかないことこそ社会貢献でしょう。この研修の中でMRがすべき社会貢献について考えます。

30数社の製薬企業に聞きましたが、MRが救命救急の講習を受けているのはそのうちわずか3社だけでした。もしMRが救命救急をできるようになれば、車を運転していて誰か困った人を見たときに助けることができます。ただ傍観者として見ているだけなのか、救命に携わることができるのかは大きな違いです。もし大規模な災害が起こったときに、大混乱の中でも医師や看護師を手助けできるわけです。それが医療人じゃないですか。そういうMRが全国に何万人もいるとしたら非常に心強い。

自分が行なったことに対して直接利益が戻ってくることばかりを期待しているから、間違いが起こるわけです。社会貢献ではまったく利益が戻ってきませんが、10年も続けていると、あの会社はこんなことをしているという評価の中で何かが生まれてくるかもしれません。これが社会の成り立ちだと思います。

営業活動だけでなく社会貢献という視点を持って、MRが世の中の役に立つことをみんなで考えるきっかけになってくれればと思います。

参加者が自身で意義を見い出す

まだ参加者の募集はしていませんが、多くの方がぜひ出席したいと言っています。参加者にはそれなりの研修費用をお支払いいただきます。会社の経費ではなく個人の支払いで受けてほしい、と私は思っています。この研修会に参加するとどのようなメリットがあるのかと聞かれますが、参加の動機が「研修の履修書を見せれば訪問先の医師が会ってくれるかもしれない」とかそういうことだとしたら、非常に低いレベルの話になってしまいます。

研修の中で他社のMRの勉強のし具合を知ったり、質問やディスカッションをしたりすることを通して、自分自身で意義を見い出すことが大切でしょう。勉強というのはそういうことだと思います。研修会では参加者がお互いに情報交換して、建設的な話が継続的にできる横のつながりを作ってほしいと思います。

クリエイティブな集団になってほしい

MRの仕事は画一化されてつまらなくなっているのです。医師が処方箋を書くから薬が売れるわけではない。最終的に患者さんが服用するわけです。薬が患者さんの口の中に入ってどうだったか。患者さんに直接聞いてみるといい。

在宅では5種類ある薬をどうやって飲ませているか。ヘルパーさんはどの順番で飲ませていいのかわからなくて、みな困っていますよ。それでは飲む薬の順番を説明したパンフレットを作ることを会社に提言してみようとか。

多くのMRが会社に対してよいアイデアを出せるようなクリエイティブな集団になってほしいと思います。仕事をさせられるのではなく、自らする人間になってほしい。研修会がそういうことを考える1つのきっかけになればと思います。MR一人ひとりが何かしらの社会貢献を考えてくれたら、世の中も少しは変わるかもしれない。

医療人としてのMRの可能性

理想を語っているのはわかっています。多くの医師からすれば私の取り組みは無謀に見えるでしょう。しかし知識と臨床経験を持つ医師にこそ、MRが変わる手助けをしてもらいたいと私は考えています。

MR不要論なんて私はまったく賛同しません。医師も看護師も医療現場から動けませんが、MRは自由に動ける職種です。緊急時にもいろいろな情報を運ぶことができる。医療人として重要なポジションになれる可能性があるのです。

MR自らが自分たちの職務の新しい意義を見い出してほしい。研修会がそんなことを考えるきっかけになってくれれば幸いです。

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