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医療政策の最新の動向と押さえておきたいポイント

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医療需要がかつてないほど高まるのは、団塊世代が後期高齢者となる2025年頃と予測されています。この大波を乗り切るためにさまざまな施策が検討・実施されていますが、病院や製薬会社にとってどのような試練やビジネスチャンスが到来するのでしょうか。またMRの仕事はどのような変化が生じるのでしょうか。医療経営コンサルタントの濱中洋平氏にお話を伺いました。

濱中 洋平 氏

  • 株式会社日本経営 コンサルタント

2025年へ向かってさまざまな施策が

医療政策は、現在2025年問題にフォーカスを当てて検討されています。団塊世代が75歳を超える後期高齢者となっていく時期であり、この年あたりから医療需要はピークを迎えるだろうと予測されています。現在の医療提供体制のままだと医療費が毎年1兆円以上増加してしまい、財源が大変厳しくなる。そのため、何とか医療費を抑制しようとさまざまな施策が実施されています。

医療政策を国が描くビジョンに沿って推し進めていくためには、大まかに言って3つの手法があります(図1)。1つめは、医療法のように新規立法や法改正など法律によって決める方法です。病床機能報告制度、地域医療ビジョン、医療事故調査機関の設立などがこの方法で進められています。2つめは、患者さんの自己負担の増額等により受療動向を変化させる方法で、大病院の外来定額負担の導入が検討されています。3つめは、診療報酬の改定等による経済誘導で、医療機関の行動変容を促す方法です。急性期入院の整備や在宅医療の充実、かかりつけ医機能の強化などが進められています。

(図1)医療政策、具体的な3つのアプローチ 株式会社日本経営 作成

病院の機能が細分化される

病院の病床機能は一般病床と療養病床とに大きく分類されていましたが、機能分化の推進により、高度急性期、一般急性期、亜急性期、長期療養に分類されるようになっています(図2)。診療報酬を使って医療機関の行動変容を促すことで、病院の機能を明確化させ、棲み分けを図ってもらおうとする政策が着々と実施されています。

たとえば高度急性期病院であれば、重症患者さんを診療したら、なるべく患者さんを早くその次の亜急性期病院とか長期療養病院など、ある程度落ち着いた状態を受け入れる病院に回してもらう。医療施設の機能分化を行い、相互の連携を促進していくことで、なるべく早く入院患者さんを在宅に帰していく、入院期間をできる限り短縮していこうという方策です。国としてはいま約100万床ある一般病床数をできる限り増やさない状態で、2025年以降の医療需要のピークを迎えたいと考えているわけです。

現在、年間100万人超くらいの方が亡くなられていますが、団塊世代が後期高齢期に差しかかるころには年間死亡者はおよそ150万人に増えてくるだろうといわれています。それを、病床数を増やさずに吸収するために、入院期間をできる限り短くしていき、最後は在宅で看取るように促す政策が進んでいます。

(図2)2025年に向けた医療・介護提供体制のイメージ 「医療・介護に係る長期推計(厚生労働省)」より抜粋

2018年が大きな変革の年になる

2025年問題に対応するためにさまざまな施策が議論され実施されていますが、その変革のピークは2018年(平成30年)に来るだろうとみています(図3)。この年は、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われます。第7次医療計画、第7期介護保険事業計画もこの年に開始されるという30年に一度の大きな機会となります。

このような環境変化の激しい時代に、病院経営の方向性を決める1つ指針となるのが「5疾病5事業」です。5疾病とは、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患のことで、5事業とは、救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、そして小児救急を含む小児医療です。国はこれらを重要疾患、重要事業と定義づけており、都道府県の各医療計画の中には、この5疾病5事業を担う医療施設が明示されています。急性期はこの病院、慢性期はこの病院、在宅はこの病院が担う、というように病院名が公表されているわけです。MRの皆さんは、ご自分が担当されている病院がどのような機能を果たす施設として位置付けられようとしているのかを確認されるとよいでしょう。

2015年(平成27年度)には「地域医療構想(地域医療ビジョン)」という政策がスタートします。各病院がそれぞれの機能を自主的に都道府県知事に報告し、都道府県がそれを調整して取りまとめるものです。既に病床機能報告制度として、今年から各病院が医師数、看護師数、患者人数、平均入院日数、備えている医療機器などを都道府県知事に報告しており、今後詳細なデータが公開されるようになります。

こうなると住民から選ばれる病院と選ばれない病院が出てきて、格差がどんどん広がっていき、特長のない病院は経営的に打撃を受けて最終的には淘汰されていく可能性もあります。

(図3)医療・介護提供体制の見直しに係る今後のスケジュール 「第1回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 資料」より抜粋

地域包括ケアシステムが実現するためには

医療・介護の地域完結型ネットワークを作るために国が目指しているのが「地域包括ケアシステム」です。急性期の病院を頂点とするピラミッド型のケアシステムを地域単位で作るろうとするもので、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体化して提供する構想です(図4)。地域包括ケアシステムが進めば、住民側には大きなメリットがもたらされると思います。

医療機関の経営戦略では、急性期から在宅までの一連の流れを1つの法人ですべて賄ってしまうという垂直統合型の事業モデルが適しています。地域包括ケアシステムでは、「地域を面で抑えた方が勝ち」というような展開になるでしょう。地域包括ケアシステムが進んでいくと、どちらかというと民間病院のほうが有利になるのではないかなと思っています。地域を面で抑えるとなると、サテライトクリニックや介護施設への展開が必要となります。公立病院や公的病院ではさまざまな制約があり、民間病院のようにスピード感をもって自由に施設をつくれません。

複数の医療法人や社会福祉法人等が出資し合って1つの組織として運営する「非営利のホールディングカンパニー型医療法人」が誕生する可能性もあります。いま議論の真っただ中ですが、恐らく数年後にはこの仕組み自体はできるのではないかと思います。

医療施設の機能分化と連携を推進する地域包括ケアシステムついては、各法人とも総論には賛成であっても、各論になると利害が対立しやすく、現実的にはなかなか地域レベルでの医療・介護の最適化は進んでいません。そこをうまく統合するのがホールディングカンパニーとなっていくのではないかと考えています。しかし、これも現実的に普及するにはまだまだ解決しなければならない課題が多くあるのが実際です。

(図4)地域包括ケアシステムのイメージ 「平成26年度診療報酬改定説明会(平成26年3月5日開催)」資料より抜粋

MRの任務も変わってくる

現在、議論されている政策は重要なものばかりですので、MRの皆さんも常に高い関心を持っておく必要があります。病院はこれから集約化されていき、統廃合は間違いなく進んでいきます。淘汰される医療機関も相当数出てくるはずです。地域における各病院の立ち位置をしっかり押さえておかなければなりません。

そのチェックポイントは、1つは経営基盤です。経営状態の悪いところから淘汰されていくのは間違いありません。民間の医療法人であれば決算データを各都道府県に公開する義務がありますので、都道府県庁に行けば資料が閲覧でき、担当先の経営状態を調べることができます。

MRの皆さんは、これまで施設ごとに営業努力をされてきたと思いますが、ホールディングカンパニー型医療法人が一般的な時代になれば購買の大元が集約されていきます。いままで使われていた銘柄が全部ガラッと切り替わることが発生する可能性も大きいと思います。グループ購買の意思決定がどこにあるのかをしっかり見ておく必要があります。

購買の大元が集約されてくると、各施設にMRが営業に行かなくてよくなります。おそらく支店長クラスの方々がエリアごとの窓口担当になり、そうなると、MRの仕事内容にも変化が生じてくる可能性があります。営業活動によって数字をつくる役割が薄れ、医薬品の情報を適切に伝えるという本来の仕事に重心が移っていくのではないかと思います。

現在ほどの人員が要らなくなり、選ばれるMR、選ばれないMRが出てくる可能性もあります。医薬品の知識は当然不可欠ですが、医療内容のレベルで医師と臆せず会話ができる、あるいは医療政策について経営層に情報提供ができる、そのようなMRが求められるようになるのではないかと思います。

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